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2016年10月

▲きものトラブル事例集▼

か行

毛羽(ピリング)

裾裏地の八掛等に見られるトラブルに「毛羽立ち」があります。毛羽立ちは生地が何かと擦れることにより、摩擦によって起こります。よく似た症状に「スレ」がありますが、スレは生地が湿潤した状態で起こり、毛羽立ちは乾いた状態で発生します。また、毛羽立ちは撚り合わせた絹糸が切れて単繊維が抜け出した状態で、スレのような繊維自体の剥離損傷は見られません。どのような生地でも濡れればスレは起きますが、毛羽立ちは事故例としては多くなく、まったく起きない生地もあります。糸の質にその原因があるとされるので修整は難しく、生地の交換となります。

 

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八掛の裾に発生した毛羽立ち(京都市繊維技術センター資料参照)

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毛羽立ちが発生した部分(京都繊維技術センター資料参照)

 

 

 

きもの de短歌 その8

お太鼓の 位置年齢できまります 若きは高く しだいに低く

・・・若いうちは胸高に、年に合わせ、帯も次第に低くなる。これ、誰でも知ってるようで、実は意外と知らずに締めてるんですね。二十歳の振袖姿では、本当に胸高に締めます。これは衿合わせとも関係していて、衿元をキュっと締めて清楚感を出すわけです。歳を重ねるにしたがい、落ち着きとゆとりを醸して帯位置を下げるのです。もっとも最近は若い人でも比較的に低めに締める人もいますね。装いに合っていればいいです。ただ、その逆はよろしくない。落ち着きがなく、稚拙に見えます。小池都知事、気をつけましょう。

 

▲きものトラブル事例集▼

か行

金彩変色

金彩(金加工)は、長期の保管中に徐々に変色することがあります。変色の原因は様々ですが、大別するとガスによるものと、酸化によるものに分けられます。金彩に用いる金属は金・真鍮・銀・アルミニウム等がありますが、例えば銀やアルミニウムはイオウ分と反応して硫化銀となり黒く変色し、真鍮は銅と亜鉛の合金であることから、酸化すると緑青に変化して緑色のサビとなります。

イオウ分といってもピンとこないかもしれませんが、着装に使うゴム製のベルトやウールの腰紐にはイオウが含まれており、緑青は文字通り酸化反応です。金彩に用いる金も本金ではなく、銀やアルミをベースに黄色く着色したものが多く、結果黒く変色するのです。また、湿気により金彩の下のバインダー(接着剤)が腐食して、変色しているケースも多く見られます。

金彩変色のほとんどが、その保管環境の悪化によって起こります。一度変色してしまうと修正は難しく、新たに金彩加工を施すとなると高額な費用が掛かります。虫干しや乾燥剤を多用し、良好な保管状態を保つことがなによりも大切です。

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金彩の硫化変色

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ホックに発生した緑青の打ち合い