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2017年4月

▲きものトラブル事例集▼

さ行

スリップ

スリップとは生地が左右に引っ張られることによって、たて糸とよこ糸がズレる現象(形態変化)のことで、一見すると破れたように見えますが、実際にはたて糸とよこ糸が交差する部分がズレて隙間が開いてる状態です。左右に力がかかる腰周りに起こりやすく、着物や長襦袢、胴裏など生地を問いません。

スリップを引き起こす原因とされるのが、生地の柔軟加工で使用される柔軟剤で、この濃度が高いと滑脱抵抗値(摩擦係数)が低くなり、スリップが起きやすくなるといいます。また、色目を深める深色加工剤の多用も原因とされています。写真2は、色糊を使った型友禅の着物の背縫いに発生したスリップで、糸が動いたことで未染着部分が露出する「目むき」という状態。

スリップは裏地に発生した場合は交換&仕立て直しで対応しますが、スリップ自体は直りませんので注意が必要です。

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写真1 夏襦袢にできたスリップ

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写真2 型友禅に発生したスリップと目むき

 

 

 

きもの de短歌 その12

帯揚げは 普段着などにはすっきりと 若きと外出 ふっくら結ぶ

・・・ま、年がら年中きもので過ごすわけではない現代では、それほど気にすることもないかなと思いますけど。ただ帯揚げはそれほど露出させるものではないので、どのような装いでもすっきり見えたほうがよいでしょう。それと色。好き勝手な合わせ方が許されるのは振袖だけです。帯〆にも言えることですが、全体のバランスが大切です。で、実は一番センスが表れるのが、この小物の色合わせなんですね。好みなので別にいいんですけど、他人はそれ見ていろいろ思うわけですよ。まあ気にしなければいいんですがね。ただ帯〆と帯揚げを同じ色で合わせるの、これ昔はありましたが今は野暮ったい。同じに見えて、同じじゃない。しかもそれが瞬時に分かる。こんな合わせ方が、今なんでしょうね。

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さ行

スレ

スレとは、絹が湿った状態で摩擦されることによって発生する絹特有のトラブルです。絹は水に弱く、濡れると縮んだり、摩擦で生地が傷んだりします。よくあるのが、シミを付けて慌てて水でこするケース。また汗をかいた部分にも起こります。スレたところは、生地を斜めにするとよく分かりますが白っぽく見えます。色が剥げたように見えますが、これは生地が損傷し、スルメを裂いたような状態になって、光の乱反射や透過により白けて見えるのです。

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スレの箇所

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スレの拡大写真

 スレの修正には樹脂系のスレ直し剤を用います。剥がれて細繊化したスレの部分を元の繊維方向に寝かしつけることで、光の乱反射や透過を軽減させます。しかし、すべてのスレを直すことは出来ず、完全に元の状態に戻すことは不可能です。特に無地染めのもの、色の濃いものは修正跡が目立ちます。

スレは着物に限らず絹織物すべてに起こるトラブルですが、未然に防ぐことも十分可能です。着物の取り扱いに対する正しい知識を持つことが大切です。

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正常な繊維

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スレ発生部分

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スレ直し部分