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2019年8月

注意!金駒刺繡の着物をお持ちの方は気をつけて!

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絢爛豪華な刺繡の着物。中でも金糸で縁取る「金駒刺繡」は、着物の柄に華やかさと

立体感を引き立たせる、高額商品によく用いられる刺繡です。

この金駒刺繡が取れてしまったので直して欲しい、という依頼が最近増えています。

もちろん、直すことは出来るのですが、実はこれが、意外と費用が掛かるのです。

 

金駒刺繡(銀駒刺繡)は「駒繡・こまぬい」と呼ばれ、太い金糸を下絵に沿わせ、

綴糸(とじいと)で留める技法なのですが、この綴糸が細く、経年劣化で痛んで

切れやすくなるのです。

 

痛んでいる糸は密着性が悪く、指で触ると浮いて動くのが分かります。

しかし一見しただけでは分かりにくく、知らずにそのままクリーニングに出して

初めて痛んでることに気付くようなケースもあります。

 

このような金駒刺繡の修理は、単なるほつれ直しでも、刺繡専門の職人に依頼します。

なぜなら、経年劣化のほつれは部分的なものではなく、全体に及んでいる可能性が高く

その場合、一部を留め直してもまた他のところにほつれが起こり、結局すべての刺繡を

一度はがして置き直さなければ、完全に直すことが出来ないのです。

そのため、刺繡直しは新たに刺繡を施すのと手間が変わらず(むしろ掛かる?)、

結局費用も高額になりがちです。

 

過去に行なったケースでは、留袖の身頃の柄30センチ四方の直しで、70.000円

ほど掛かったことがあります。

また一度、部分的な直しを依頼したことがあったのですが、思いのほか費用が掛かり

(10センチぐらいで20.000円)、また完全に直るわけでもないので、

結局加工を諦めたこともあります。

 

金駒刺繡の柄は、友禅模様の留袖や訪問着にも用いられるので、このような着物を

お持ちの方もいらっしゃると思いますが、刺繡はとてもデリケートです。

取り扱い、メンテナンスには細心の注意が必要なことを、お忘れなく。