2011年11月
きものを美しく装う「きもの百首」その6
おはしより 体型ごとに皆かえて
大柄長く 小柄短く
おはしょりの長さはだいたい決まっていて、5~6センチが適当とされています。
そのきものが自分の身長に合っていればよいのですが、
問題は着丈が短い場合。
腰紐の位置で調整するしかありませんから、
そんなこと言ってられません。
あくまで着丈に余裕のあるきものの場合のことです。
ただ、いくら長さに余裕があるからといって
長すぎるおはしょりはヤボ。
短めのほうがスッキリ見えます。
さて、ではナゼおはしょりはあるのでしょう。
おはしょりは必要なのか・・・
結論から言うと、着るという機能的な面で、
おはしょりがなければ着られない、ということはありません。
実際、男のきものにはありませんし、女性のきものも
江戸時代初期までは男物と同じ対丈でした。
では、何故おはしょりは存在するのか。
きもののディティールが完成したのは江戸時代でした。
打掛の下に着ていた小袖が表着になり、庶民の衣服となると、
町人文化の成熟度に従い、様々に変化していきました。
紐のように細かった帯巾は次第に広くなり、
歌舞伎の影響から装飾的な結び方に変わります。
袖丈も次第に長くなり、振袖へと変化。
それに合わせて結髪が大きくなると、着方も大きく衣紋を抜くようになり、
その結果、バランスを保つため着丈も長くなっていきました。
そのため、外出の時はシゴキで裾をたくし上げて歩いた。
これが、端を折ることから、ハシオル、「おはしょり」となったのです。
今日のおはしょりは、先に作ってから帯を巻きますが、
当時は長いまま着て、必要に応じておはしょりをとりました。
現在でも、舞妓さんの着姿にその名残を見ることができます。
「おひきずり」は、しかしながら当時のモードであり、それゆえ憧れでした。
言うならば、きものの形は、江戸の美意識の大集成であり、
それを受け継ぐ、日本人の美意識にほかなりません。
過去に、誰でも簡単に着られるというふれ込みで、
おはしょりの無い着物が商品化されたことがありました。
でも、結局定着しませんでした。
それはきものではなかったからです。
それが必要かどうかより、それがきものなのだ、という必然。
まさしくきものは文化、なのです。