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しみ抜きの真実「え~しみ抜きって目の錯覚だったの?!」

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                                                        before

 

 

 

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                                                        after

 

上の画像は、茶色く変色した酸化じみを、しみ抜き加工したものです。

酸化じみは表面に茶色いしみが付着しているのではなく、

りんごやバナナの変色と同じで、酸化作用により変質して発色したもの。

なので、普通に洗っただけでは落ちません。

そのため、しみ抜き加工もシンナー等の有機溶剤だけでなく、

酸素系漂白剤を併用した染料による染色補整を伴う修整工芸が必要になります。

 

酸化じみは、生地が傷んでいるので強い薬品は使えず、注意を要します。

今回のしみも、当初はその状態からしみ抜きではなく、

柄を置いてしみを隠す方法を考えていました。

 

もとより、古じみの場合、無理してしみ抜きするより、

柄足しで対応するのが一般的です。

 

しかし、今回はしみ抜き加工でした。

しかも、しみはキレイに取れてます。

 

「柄足しじゃなくて、いけたんですか?」

「なんとか」

「よく落ちましたね」

「なんとかごまかせました」

「真っ白じゃないですか」

「黄ばみは残ってますよ、見えないだけです」

 

 見えない?

 ちょっと意味が分からない。

 

「黄みが残ってるので、染料のせてます」

「色のってるんですか、(無地場が白地なので)白で?」

「いえ、紫です」

「紫・・・?」

 

酸化した黄ばみは100%消すことは不可能です。

必ず幾らかは残る。

それを染料で修整するのです。

 

でも、紫にはなってない?!

 

実は、この紫は「補色」です。

「色相環」という図をご存知でしょうか。

色の相関関係を表したもので、サークルの正反対に位置する色を

「補色」といって、紫は黄色の補色に当たります。

 

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つまり、うっすら残った黄みに、薄く紫をのせることにより、

黄みを押さえているとのこと。

色を重ねることで、見え難くする。

補色にはそういう作用があるそうなんです。

 

これは科学的に言うと「補色残像」という現象で、

ある色をしばらく見つめた後、その色を視界から消去すると

視覚上にはその補色が残像として残るという目の錯覚です。

これを利用して、目に映る色を調整することが出来るのです。

 

実はこの補色残像は実際にすでに利用されていて、

たとえば病院の手術室の内装や、手術着の色を緑色にすることにより

赤(血液の色)の残像(補色)を相殺させるとか、

逆に、牛乳パックの白を基調としたパッケージに青色を用いることで、

青の残像であるクリーム色を出現させ、「濃い牛乳」というイメージの

演出に使われているそうです。

 

染色補整もこの現象を用いて行われます。

しかしそれは最終的なテクニックであり、その段階に至るには

高度な補整技術が求められるのは言うまでもありません。

生地の痛みを考慮して、ここまではいい、これ以上は無理というギリギリのラインで

薬をコントロールする経験値が絶対的に必要になるのです。

 

また補色に用いる色自体、地色に合わせて微調整する必要があり、

さらに個々の個体差により、視覚の映り方に微妙な違いが起こるそうで、

その色合わせは、まさに究極の染色技術なのだそうです。

 

職人の技ってやっぱりスゴイわ。

 

しかししみ抜きして、一見きれいになったように見えても、

実はそれが目の錯覚で、本当は汚れたまんまだなんてね。

 いや、いいんですよ。見た目だけだって、キレイになれば。

あたしの身近にもね、やたら塗り込んで色んなもの消しまくってるひと、

知ってますもん。

そう、他でもないう・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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