えっ、きものの保管に防虫剤はいらないの?
もちろん、100%不要とは言いません。
しかし防虫剤を入れすぎると、かえってきものに悪影響を及ぼすことをご存知ですか?
それも重大なー。
これは大切なことなので、詳しくは次の機会に改めますが、防虫剤は使い方によっては
メリットよりデメリットの方が大きくなるのです。
入れ過ぎるくらいなら、むしろ入れない方がよいくらいです。
何故かというと、これはあまり知られてないことなのですが、
そもそも、きものはあまり虫が食べないのです。
上の図は虫による食害率を表したものです。
蚕の吐く糸は、フィブロインというたんぱく質と、セリシンというニカワ成分で作られ
ていて、それを精錬することによりセリシンを除去したものが、絹糸です。
図を見ると「生糸」に比べ「石けん精練」の糸の方が、大きく食害率が低いことが
分かります。生糸は精練してセリシンを取り除くと、食害が約10分の1と劇的に
減るのです。
絹糸で出来たきものは、実は意外にも虫の害を受け難い。このことからも、
防虫剤の必要性がそれ程高くないことが、お分かり頂けると思います。
ただし、繰り返しになりますが、まったく食べないわけではありません。
特にウールや木綿のきものには、防虫剤は必要です。
また、昔の「地絹」と呼ばれる練りの不完全な布や、酸化したシミの多いきものも、
相対的に食害率が高くなるようです。
つまり、古いきものほどそのリスクは高くなるのですが、例えば作って10、20年
ぐらいで、そしてそれなりにメンテも心掛けているようなきものであれば、
それほど神経質になる必要はない、ということです。
むしろ、防虫剤を大量に使用すると、いわゆる「ガスやけ」と呼ばれるシミや、
金や箔が溶けてしまう等、過剰に気化した防虫剤による事故が起き易くなるのです。
その確立は食害率の比ではなく、40~50%にも及びます。
そしてそのような故障は致命的で、一度なってしまうと、もう直りません。
しかし、これを防ぐ簡単な方法があります。
それはこの事実を知り、行動を起こすこと。
あなたが大切にしているきもの、もし鼻をつまむほど、たくさん防虫剤を入れてるなら、
今すぐに全部取り出してください。
それがあなたのきものを守る、最初にして、最良のお手入れです。
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