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2020年1月

きもの着ましたぁ!・・・で?

きものを着て帰ってきたら、

さてどうします?

あーようやく帰ってきたー疲れた~!

って、きものを着ると、まあ実際皆さ

んこんな感じですよね。手早く脱ぎ

捨て、足でけ飛ばし、あーもういいや

って思いつつ、でもこのままじゃまず

いと、アタマでは思いますよね。

そしてとりあえず今日はハンガーに掛

けて明日やればいいや、となります。

無情にも時は過ぎ、あっという間に翌

日です。振り返れば、そこには昨日の

まんまの脱ぎ捨てられた惨状。

さてどうする?

 

とにかくどうにかしなきゃなんない。

そこでネットで探ってみると、

うん色々出てますね。

必ず干してホコリを払い、シワはハン

ガーにtつるして取りましょう。

汚れはベンジンや濡れタオルで

チョチョイのチョイ。

中にはネットに入れて、洗濯機で洗い

ましょう、なんて豪快な方法を載せて

いるサイトもあります。

 

今の時代、何を調べるにも、先ずはイ

ンターネットです。しかし、無防備に

信じ込んだら、そこは白黒入り混じる

カオスの世界。キケンと隣り合わせで

ケガをします。

 

大体ネットに載ってること、あたかも

簡単そうに書いてありますが、真似し

てやっても、まず上手くいきません。

ハンガーに掛けてもシワは伸びないし

濡れタオルでチョイチョイしたら汚れ

は更に広がります。洗濯機なんてアナ

タ、想像しただけで背筋が凍ります。

 

もちろん、方法としては決して間違い

ではありません。ただ当然ながら知識

とスキルが必要で、素人が単に真似を

しても上手くいく訳がないのです。

 

では、どうしたらよいのか。

実は皆さんがやるべきことは、

たったひとつです。

 

それは 

きものが今どういう状態

なのか確認すること。

です。

先ず部屋を明るくして、床にきものを

広げてください。そしてシミや汚れが

ないか調べて下さい。表から裏まで、

つぶさに隈なく、目を皿にしてチェッ

クするのです。

自分のきものの状況確認。

これが一番大切なのです。

 

では、どのように調べるか。

チェックするポイントとして

 

①衿

2020111113020.JPG

 

衿は一番汚れが目立ち、放っておくと

汚れが膠着し易いところ。

留袖など比翼仕立てのきものは比翼の

衿もチェック。

 

 

②袖口

2020111113547.JPG

 

袖口も直に皮膚に当たるところで、

汗や皮脂で汚れ易い。

 

 

③その他汚れ易い箇所

2020111114140.JPG

それ以外にも、車の乗り降りで汚れが

付きやすい後ろ側の裾や、汗をかきや

すい脇の部分や背中なども要チェック

(汗かきは裏地側から見た方がよく

分かります)

 

きものの状態が判れば、それに合わせ

て取るべき対応が分かります。

その選択肢は大きく分けて3つです。

 

まず、もし何も汚れが無くシワもなけ

れば、そのままタンスに仕舞えます。

汚れていなければ無理に洗う必要はあ

りません。

また汚れはないけど、シワが目立つの

であれば、一般のクリーニング店での

クリーニングやプレス加工でも大丈夫

です。(ドライクリーニングだけでも

OKという意味)

そしてシミや汚れがあるのならば、

これは迷わず専門の業者に依頼するの

がよいでしょう。

 

では、どのようなお店に出したらいい

のか?これも迷うところです。

 

一般的にクリーニング店や呉服屋さん

またはデパートの呉服売り場の悉皆加

工部等、基本的にはどこであれ、信用

としっかりした技術があればよいかと

思いますが、大切なのは着物のこと、

また着物の生地のことを知っている

ということです。

 

着物の絹糸は、私たちの皮膚と同じ

蛋白質です。

絹は親水性が高く、染め上がりが良い

のですが、その分しみや汚れが定着し

易く、放置すると化学変化で酸化し変

色を招き、結果的に生地を痛めます。

 

なので着物のしみ抜きには、付着した

しみや汚れを落とすだけでなく、その

ことによって変質した状態を、染料や

その他様々な工芸修正を用いて修復す

る技法とスキルが必要になるのです。

 

また着物の生地も絹の他に綿、麻、化

繊など様々なものがあるので、その素

材の違いにも適切に対応する必要があ

ります。

 

つまり着物をしみ抜きするためには、

しみを落とす技術とその跡を修整する

技術、そしてそのための染料や染織の

知識も必要になってくるのです。

 

もっとも初めてしみ抜きを依頼しよう

とするお店に、そんな技術や知識があ

るかどうかなんて分かりませんよね。

 

ではどうするか。

一番いい方法は、質問することです。

それに対してしっかり答えられるか、

やってみなきゃ分かりませんでなく。

 

きものの手入れ加工は、3つに大別

されます。

一つは丸洗い(生洗い)またはしみ抜

きのみの加工。

2つ目は丸洗いとしみ抜きの併用。

もう一つは、丸洗い・しみ抜きと、

染料等を使った工芸修整の併用です。

 

自分のきものがこの3つのどれに当た

るのか、聞いてみるのです。

 

しっかりした技術を持っているお店な

ら、見るだけで分かりますし、その状

態を見て、どのような加工が必要か、

費用が掛かるかどうかも、その場で答

えてくれます。

 

ちなみに丸洗いとは揮発溶剤を使った

いわゆるドライクリーニングのことで

これだけではしみや汚れは落とし切れ

ません。

時折、丸洗いすればきれいになります

という表現を見ますが、これはしみ抜

きも含まれているケースが大半です。

そのため料金も千円台から1万円以上

と巾があります。

 

話を戻しますが、とにかく確認するこ

とが大切です。

それと、仮にしみを見つけても、決し

て自分でイジらないでください。

 

前述したようにネット等の情報は、

いわゆるフェイクなものも多く、その

まま真に受けるのは非常にキケンです

(ま、これもネットですが)。

 

例えばの話、

★きものをハンガーに掛けて干す

この当然に思える行為も、長ければ良

いというものでもなく、余り長く吊る

すと、生地によっては(特に留袖)

自重で伸びて、裾が袋状にたるんでし

まう恐れがあります。

干す場合は扇風機などを併用して時短

を心掛けるようにしましょう。

 

★ハンガーに掛けてシワを伸ばす

おそらく1ヶ月吊るしても、シワは伸

びないでしょう。シワは自然には消え

ません。シワを消すには、消すための

「修繕」が必要なのです。

 

★アイロンは低温で当てる

アイロンを使うときは、決して直に当

てたり、スチームをかけたりしてはい

けません。生地にアタリが出たり、縮

みを起こす恐れがあります。

アイロンを使用するときは、必ず裏側

から当て布をして、スチームをかけず

中温で縫い目を避けてかけます。

この時、ちょっと伸びたかなくらいで

止めること。伸び切るまで当てると、

生地に負荷が掛かってしまいます。

 

★水で叩く

きものに水を用いるのは厳禁です。

お湯でも絞ったタオルでもダメです。

「叩く」という行為を、多分シミを落

とす作業と履き違えているようですが

仮にベンジンを使ったとしても、

やり方を間違えれば、シミを落とすよ

りもムラになる可能性が高いです。

もし、それを水で叩いたとするなら、

それは真っ白なキャンバスに真っ黒な

ペンキを叩きつけるような、壊滅的行

為に等しいのです。恐ろしい・・・

 

そしてシミにも色々あります。

付着シミや酸化シミ、水溶性や蛋白系

そしてそれらが混合したシミ。

ちなみに、衿の汚れはそれらが混ざり

合った複合的なものなので、一見簡単

そうに見えますが、きれいに落とすの

は実はとっても難しいのです。

 

きものは手入れが大変で、確かに洋服

のように、気軽に家では洗えません。

でも、それは絹の持つ特性でもあり、

それゆえのしなやかさなのです。

 

絹の成分は、私たちの肌と同じたんぱ

く質。つまり、スキンケアと同じに、

いたわることが必要なのです。

皆さん、お肌のお手入れには十分過ぎ

るほど気を使いますよね?。

きもの専門店に依頼することは、美容

外科にすがることと同義語なのです。

 

それでも、自分でお手入れしたいので

あれば、まずは不用なきもので練習し

ましょう。

手持ちがなければ、リサイクルで安い

ものを調達する手もあります。そして

実際にやって見るのです。自分でどこ

まで出来るのか。実践あるのみです。

 え、やり方が分からない?

そんなの、ネットを見ればゴマンと

あるじゃないですか。

ほーら、たっくさん載ってる。しかも

どれも簡単そう。これなら自分で・・

あれっ、戻った? まあいいか。

 

今年皆様がご無事でありますよう、

心からお祈り申し上げます。