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2020年8月

丸染

久々の丸染です。

丸染加工はその名の通り、丸ごと染め

ます。解かずに染めるので、普通なら

必要になる仕立て代や裏地代といった

周辺費用が掛かりません。

 

加工代も3万円(税別)と、更生染め

としてはお手頃で、この金額で着物が

一枚増えるのならお得です。

 

お得なんですが、誰にでもお勧め出来

る染め方ではありません。

合う、合わないが、あるのです。

 

それをしっかり見極めないと、丸染ほ

ど野蛮で大胆で、リスキーな染め方も

ありません。

 

丸染は裏地が付いたまま加工します。

染料の中に漬け込んで染めるのです。

当然、裏も表も一遍に染まりますが

それが生地に不都合をもたらします。

 

生地が縮むのです。仕立てたままなの

で、表と裏の収縮率の違いからツレが

出て、全体に歪みが生じます。

 

元柄の染めによっては滲み、刺繡や箔

があれば、解れや剥離を起こすことも

考えられます。

 

生地の特性によっても異なり、ちりめ

ん系の撚糸を使ったものは特に縮み易

く、お召や紬等先染めのものはオレ・

スレが起きやすい傾向があります。

 

更に色自体も元色との混濁でくすみ、

染上がりは当初と微妙に変化する。

つまり染めてみないとどうなるか判ら

ない、言わば成り行き加工なのです。

 

2020825154839.JPG

 

もちろん、これらのリスクは可能性の

問題であり、すべてがそうなるとは

限りません。

 

大切なのは、様々に異なる状態の着物

に合わせ、それらの故障が起きない様

または起きてもそれに対処可能かどう

かを「加工する前に」判断することな

のです。

 

いずれにしても、染めること(もちろ

んこれも当然熟練を要する)より、そ

れによって起こり得る様々な故障(そ

のままではとても着られない)に対処

し、特に必ず起こる「縮み」を修整す

ることが重要となり、この作業が全体

の6割を占めます。

 

実はこの生地の修整工程こそ、丸染の

最大の特徴であり、技術なのです。

この、縮んでツレて歪んだ生地の布目

を、熟練の職人の技はアイロンひとつ

で修整します。

 

そしてこのスキルがなければ、丸染と

いう染色法はありえません。

 

2020825171923.JPG

 

丸染は、最近でこそその名を知られる

ようになりましたが、このような確固

たる修整技術がバックボーンにある事

は、あまり知られていません。

 

ただ、やはり100%元に戻すことは出

来ません。縮みは修整出来ますが、

どうしても袖口や八掛のフキの辺りに

ヨレが残ります。

 

なので完璧な仕上がりを求めるのであ

れば、この染めはお勧めできません。

 合わないのです。

 

丸染をお勧めできるのは、次の3つに

当てはまる人です。

 

①とにかく安いのがイチバン

②自分が着る

③細かいことは拘らない

 

染め上がりの出来栄えより、再び着る

ことができる着物に戻すことが重要な

ファクターである丸染は、染色方法と

しては異質かもしれません。

 

でも、少ない投資で大きな変化が得ら

れる丸染は、上手くいくと満足感も大

きい。その意味ではギャンブル的な要

素があるかもしれません。

 

更生染全般に言えることですが、

とにかくしっかりとした目的意識を持

つ、その染が合致するかを見極める。

その判断が大切です。

 

え、その指南ですか?

ハーイ、よろこんで!

もちろん、悪いようには

い・た・し・まっせ~ん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セミも団地住まい(のようにも見える)

202081715225.JPG

桜台団地にて。

ん~無理やり、かな。