きものトラブル事例集
きものトラブル事例集 は行 その③
③変色/残留物による変色
タンスの中にしまっておいた着物が、
着ていないのに、気がついたら変色し
ていた、なんてことがあります。
着物の変色の原因には様々なものがあ
りますが、唯一保管状態にかかわらず
起きるのが、残留物による変色です。
着物の染めは、様々な工程を経て完成
するもので、それらの工程ごとに多く
の薬剤が使用されますが、その薬剤成
分が繊維上に残留し経年変化すると、
地色を変色させることがあります。
画像①
例えば①のような紋周辺の変色です。
紋加工をする際に、薬剤を用いて紋を
洗う工程があり、この時の薬剤の洗浄
中和が不完全で残留すると、後日紋の
周辺を輪を描くように変色します。
紋を洗う工程は反物の状態で作業しま
すので、背縫いを介して変色に連続性
が無いのが特徴的です。
画像②
また②は、無地染の着物が変色した
事例です。
仕立て前の繊維上に、染色や整理加工
で使用した薬剤が不均一に残留してい
ると、経年変化でこのように変色する
ことがあります。
仕立て以前の反物状態で、原因となる
残留物が付着しているため、仕立ての
縫い合わせとは無関係に発生します。
したがってこの画像のように、左右の
身頃で縫い目を境に、まったく違う形
に変色が発生します。
残留物による変色は、着用以前の生地
変容に起因するため、言わば不可抗力
のトラブルといえます。
経年変化による変色の場合、通常脱色
・色補正で修整しますが、残留物が原
因の変色は残存範囲の確認が難しく、
完全に直すことは不可能です。
合掌
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