ホーム>スタッフブログ>2022年4月

2022年4月

きもの DE 短歌 その26

付下げは 反物のまま柄づけし 裁ちて仕立てて 柄は上向き

白生地を着物の形に仮縫いして染める

訪問着と違い、付下げは反物の状態で

伸子張りして染めます。

 

柄付けの位置は予め決まっていて上前

身頃、左胸、左内袖、右外袖、右肩口

後裾等、縫目を介して繋がらないのが

特徴です。

 

連続した裾模様ではないので豪華さ、

華やかさはありません。それもそのは

ずで、付下げが生まれた理由が戦時中

の贅沢を慎む社会情勢だったのです。

 

言わば戦争の遺産とも言える柄付けで

すが、それゆえ訪問着にはない洒脱や

粋さを表現する自由さがあります。

そのため格の高さとしては、若干付下

げの方が下がる傾向といえます。

 

もちろん、付下げにも格調高い柄もあ

ります。

 

そこで訪問着と付下げを一発で見分け

るポイントをお教えします。

 

それは、衿に柄があるかどうか。

あれば訪問着、無ければ付下げです。

 

しかし断言はできません。

油断してはなりません。

 

中には柄のある付下げもあるかもしれ

ないのです。

 

世の中、何が起こるか分かりません。

あのロシアだって攻めて来たんです。

 

ですから一発ではなく、三発目当りで

お願いします。

 

以上、きものDE短歌その26でした。

 

 

きものトラブル事例集 は行 その⑤

変色 (黒留袖の経年変化による変色)

留袖の黒は喪服と違い引き染めで染め

られます。これは三度黒と呼ばれ、種

類の異なる染料液で三回重ねて染める

ことで、深い黒が得られる技法です。

 

留袖の地染めは、最初糊置きされた

の上から引き染めし、水洗後に更に黒

を引きます。最初の黒は化学染料で、

二回目以降はログウッドというタンニ

ンを含んだ植物染料を使います。

 

二回目以降も引き染めで染めますが、

重ね染めという技法上、柄との界線

ぎりぎり迄染めることができせん。

つまり柄場周辺に、言うならば染め残

が出来る訳です。

 

この様な染色跡は流通過程では殆ど分

からないものですが、数十年の時の流

れを経ると、二種類の染料の違いが変

違いとなって現れるのです。

 

下の写真はこの二種類の染料が経年

化で色違いとなって見えたものです。

 

経年変化による変色は生地の変質も

いますので、その意味では一つの使

期限の目安と言えるかもしれません。

 

202241117218.JPG