きものトラブル事例集
きものトラブル事例集 は行 その⑤
変色 (黒留袖の経年変化による変色)
留袖の黒は喪服と違い引き染めで染め
られます。これは三度黒と呼ばれ、種
類の異なる染料液で三回重ねて染める
ことで、深い黒が得られる技法です。
留袖の地染めは、最初糊置きされた柄
の上から引き染めし、水洗後に更に黒
を引きます。最初の黒は化学染料で、
二回目以降はログウッドというタンニ
ンを含んだ植物染料を使います。
二回目以降も引き染めで染めますが、
重ね染めという技法上、柄との境界線
ぎりぎり迄染めることができません。
つまり柄場周辺に、言うならば染め残
しが出来る訳です。
この様な染色跡は流通過程では殆ど分
からないものですが、数十年の時の流
れを経ると、二種類の染料の違いが変
色の違いとなって現れるのです。
下の写真はこの二種類の染料が経年変
化で色違いとなって見えたものです。
経年変化による変色は生地の変質も伴
いますので、その意味では一つの使用
期限の目安と言えるかもしれません。