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きものトラブル事例集

きものトラブル事例集 は行 その6

変色 箔の変色・剥離

 

20221224103016.JPG

 

箔の経年劣化による変色です。

橘の花の下半分が黒ずんでいます。

元は金の引き箔でした。

 

そして周りの葉の茶色い縁取りも元は

金、更に左側に見える雪輪の縁も、

元々は金加工が施されていました。

 

このような変色は、箔自体が変色する

ではなく、箔を留めている粘着剤が

腐食して起こります。

 

本来金は(その純度にもよりますが)

ほとんど変質しません。つまり変色し

たのであれば、それは本金箔ではなく

樹脂箔だったということです。

 

樹脂箔とは箔押し(ホットスタンプ)

と呼ばれる技術で、箔(フィルム)を

熱で圧着させて金属のように装飾した

ものです。

 

箔の色を変えれば様々に装飾出来る為

それを変色と気付かず、結果的に悪化

させるケースも少なくありません。

 

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そして粘着剤の腐食が進むと、この様

剥離が起こり始めます。

 

この状態になってようやく気付くケー

もあるのですが、ここまで進

離が一部だけでなく、既に全体

可能性が高くなります。

 

中には触っただけで剥がれ、畳む

ロボロ落ちてくる酷い状態のもの

もあります。

 

こうなると、もう何をしても手遅れ。

着物としての終焉です。

 

きものの劣化は、私たちの老化と同じ

です。気づかぬ内に忍び寄るのです。

 

箔の剥離が、鏡に映る自分の頭皮と思

えば、事の重大さに気づくのです。

 

ハ~。