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これなら・・・
これは長襦袢です。
色の名前で言えば赤香(あかこう)
に似ていて、柔らかい黄赤の色に染め
たように見えます。
でも実はコレ、白い長襦袢です。
元は白い長襦袢だったのが黄変して
この色になりました。
絹は時経変化で変色します。
これは絹糸に含まれるタンパク質の
アミノ酸が、空気中の酸素や紫外線に
酸化・分解されてメラニンに変化する
から。
メラニン。
そう、これは皆さんの肌の日焼けと
同じメカニズムなんです。
しかしこの長襦袢、
これだけ黄変していても、
シミらしいシミがありません。
これだけ色が変わっていれば
普通ならシミの一つや二つあるハズ。
が、まるで染めたようにキレイです。
これは珍しい。
本来、白い長襦袢は普段着には
合わせませんが、
これなら小紋や紬にも
シレっと着れるかもしれませんねぇ。
知らんけど。
え、胴裏の色が移った?ナニそれ?
ブラックライトに映し出された汗シミ
シミの状態を表す言い方に「胴裏の
色が移る」というのがあります。
最初は何のことかと、色胴裏でもある
まいし、色が移るわけないだろ、と。
で、よくよく聞いてみると、それが色
ではなく、糊のことなのだと言うのが
分かりました。
薄い羽二重の胴裏は、張りを持たせる
または増量のため、生地に糊を含ませ
ています。
汗をかいたまま長期間放置すると汗の
成分が酸化変質を促し、胴裏の糊分を
溶かす作用があるそうです。
特に古い胴裏に顕著に見られ、触ると
生地が硬くなっていたり、周囲の黄変
に比べ、逆に白っぽく抜けているよう
に見えることもあります。
溶けた糊成分は次第に表地に移り、
今度は表地の酸化作用を促します。
そして内側から湧き出た汗による酸化
変色は、外から付けたシミとは違い、
染料彩色を伴う工芸修正をしなければ
直りません。
いずれにしても汗シミ的には最終段階
の状態で、表地に与える影響も大きく
なるべく早く交換する事が大切です。
本年最後の投稿となります。
毎回ネタ探しの苦労は尽きませんが
読んで頂き、少しでもへぇ、と思える、
参考にしてもらえる内容を心掛けております。
今年1年、お読み頂きましてありがとうございました。
来年も宜しくお願いいたします。
どうぞ良いお年を。
浴衣のクリーニングについて
浴衣は昨今では、夏祭りや花火大会等
を盛り上げるイベントコスチュームと
して、気軽に楽しめる夏の装いです。
ですが、浴衣は紛れもなく着物です。
そして、浴衣が属する木綿の着物とい
うジャンルで括ると、久留米絣や阿波
しじら等の伝統工芸の織物と同じで、
この辺りがお好きな方は、逆にきもの
通でも結構コアな部類に入ります。
木綿の着物は裏地を付けず、ひとえで
仕立てます。
民芸織物の木綿は普段着であり生活着
なので、汚れても洗濯が出来るように
ひとえなのです。
当然、冬でもひとえです。
なので生地がしっかりしている。
そんな浴衣を夏に着ると意外に暑い。
見た目に拘わらず、暑いです。
だから着ると汗まみれになる。
汗のような水溶性の汚れは、
水でなければ落ちません。
なので木綿の浴衣は、
水洗いが一番適しています。
では、水で洗うだけでそれじゃキレイ
になるかと言うと、中々難しいです。
水で洗うことでの一番のリスクは、
縮むことです。
もちろん、絹物のような極端な縮み方
はしませんが、綿糸は元々テンション
が掛けられた状態で製糸され、浴衣地
は更に糊を引き張りを付けているので
水に濡れると元の状態に縮み、形崩れ
を起こし易いのです。
特に最近の浴衣は綿100%だけでなく
麻混等、混紡地のものも多く、どの程
度縮む恐れがあるか、必ず事前の確認
が必要です。
また絞りの浴衣は絞りが伸びてしまう
ので、水では洗えません。
次に考えられるリスクは色落ちです。
特に本藍で染めた藍染の浴衣は堅牢度
が低く、事前に擦ってみて色が付くよ
うなら、やはり洗えません。
そして肝心なのは、水だけではシミ、
汚れは落ちないということです。
汗の成分は99%が水なので、水で洗
えば殆ど落ちるのですが、着たことで
生地に付着した皮脂やタンパク成分は
洗剤だけでは落とし切れません。
結果、残留成分は黄バミとなります。
また、浴衣は一度でも水洗いすると、
生地に引いていた糊が落ちてコシが無
くなりますので、布に張りをもたせる
には、再度糊入れが必要になります。
このように単に水で洗うと言っても、
決して簡単な事ではなく、いくつもの
リスクが隠れているのです。
これらをクリアするには、浴衣につい
ての知識は勿論、素材・染色の知識、
しみ抜きの技術など、あらゆるスキル
が必要になるのですが、何よりも大切
なのは、その判断力です。
例えば浴衣の洗い加工には、水洗いの
み、水洗い+しみ抜き、ドライ+汗抜
き剤、ドライ汗抜き+水処理、および
しみ抜き併用等、様々な処理方法があ
るのですが、どの処理が一番その浴衣
に適するのか、を判断する力です。
衣類のクリーニングはその素材に合わ
せた加工が必要ですが、特に着物には
様々な素材と染色法があるので、幾つ
もの加工を組み合わせ、処理すること
が必要になるのです。
上記の「ドライ汗抜き」加工は、ドラ
イクリーニング液に汗抜き剤を添加し
て洗うもので、通常絹物の着物の汗抜
き加工に用いられますが、絞りの浴衣
等はこの処理方法が使われます。
また、色落ちし易い草木染の場合は、
ドライクリーニングと局所の水処理及
びしみ抜きの併用となり、これは本藍
の浴衣などに用いられます。
そしてどの様な加工にせよ、水を使う
加工は、必ず縮みが起こります。
この縮みを修整するのが、
手仕上げで行う「整理加工」です。
水洗いで縮んだ浴衣を、乾燥させなが
らアイロンひとつで元の寸法に戻して
いきます。
熱を掛けながら、収縮度合を微妙に調
節し、巾を合わせてゆくのです。
この寸法を元に戻す技術が無ければ、
浴衣を水で洗うことは出来ません。
きもの水洗い
このように、着物専門店の浴衣の洗い
加工では、様々な技術を組み合わせ、
職人が1枚1枚手作業で行います。
そのため加工料は、そこそこします。
一般のクリーニング店の料金を見てみ
ますと、1000円台から4000円
前後まで、意外に幅があるようです。
ちなみに白洋舎さんは3000円台で
水洗いということでした。
大手のお店の方が割高のようです。
もちろん、それらの業者さんが実際に
ではどの様な加工をしているのかは、
ブラックボックスで分かりませんし、
金額の高い安いで業者の良し悪しが決
まる訳でもありません。
値段の評価は相対的なものですから。
でも、もし上記のズラズラ書いた諸々
の事が、全部込みこみで1000円!
だったら・・・
それは、いいですね。
イチバンですよ!
最高です。
取引先、即、乗り換えます!
〇〇〇〇のシミ
このシミは「おしっこ」です。
ハイ、意外と多いんですね。
裾は汚し易い部分です。
尿の成分はその90%近くが水分で、
残りがタンパク成分などです。
なのでおしっこのシミは早めに水洗い
すればキレイに落とせます。
とは言え、シャツやジーンズならまだ
しも、着物じゃそうは行きません。
しかし時間が経つと残ったタンパク質
が凝固して、結果落ちにくい酸化した
黄シミに変質してしまいます。
こうなると通常の酵素剤や漂白剤等で
は落とし切れず、染料を併用した工芸
修正が必要になります。
上の画像は裾の比翼地のシミ。
見る限り目立つ変色は際の部分だけで
しみ抜きが可能なのはこの程度まで。
比翼地は生成りなので修整には限界が
あり、これ以上の変色の場合には比翼
地の交換も含めた対応が現実的です。
粗相した着物のお手入れは、なかなか
気まずいかもしれませんが、何も言わ
なくてもプロなら見れば分かります。
早めのお手入れを心掛けましょう。
雨の園遊会でゾ~っとしたこと。
5月11日、赤坂御苑に於いて
令和初の園遊会が開催されました。
園遊会が開かれるのは4年半ぶりと
いうことで、招待客も多彩な顔触れ
で、各界より1000人余りが参加。
両陛下も会話が途切れず、開催時間も
例年よりも大幅に超えてしまうほどの
盛況ぶりだったとか。
まあそれはいいとして、問題なのは
当日の天気。
雨でした。
それも時折雷の鳴る悪天候。
園遊会ですから、皆さん気合の入った
お召し物でしたね。
そんな一張羅の着物姿で
傘を差しての長時間の雨の中。
それでも、目の前に御座すは天皇陛下
ですから、雨が降ろうが槍が降ろうが
そんなの関係ねェ~状態でしょう。
仁左衛門さんなんか、
傘も差さずに待っていました。
でもそのシーンを見てこちらは思わず
うわっ、ヤッバ~い!ですよ。
いくら傘を差してたとは言え、長時間
の雨の中、あの着物たちはどうなった
のだろうか?
ちょっと衝撃でした。
天気が雨だろうと、園遊会のニュース
であれば、関心事は招待された顔触れ
とか陛下のご様子等がほとんどで、雨
の中の着物の、しかもその行く末等を
案じる視点は、あまり無い。
悉皆やの悲しい性である。
着物は濡れることを一番嫌います。
着物を濡らすとどうなるか。
シミになる、色が落ちる、生地が縮む
それらが一遍に起きるのです。
直すのにそれこそ何ン万円も掛かる。
黒紋付なんか1度で終わるかも(怖)。
なので着物に絶対してはいけないこと。
それが、濡らすことです。
これから梅雨の季節。
雨が降りそうなら必ず雨具の用意を。
また、事前に着物や帯にガード加工、
防水加工をしておく事も有効です。
そしてもちろん、可能であるならば、
着るのを止めること。
これが一番です。
ご同輩
あれ、お前寂しくなってね?
↓
お前も苦労してるんか、
もうジジイだもんな。
オレと同じだ・・・
実は親戚。
おまえは誰だ?
お、おまえこそ誰だ!
こんなの出来ます。
着物の生地で色々作れます。
日傘
持ち手は3タイプあります。
用尺は50㎝×8枚
京扇子
残布で出来そう。
用尺50㎝×36㎝
着物・羽織から名古屋帯にリメイク
お太鼓と前腹に用います。
用尺 お太鼓60㎝
前腹76㎝
和クッション 45×45
デザインは2タイプ。
見本は赤、黒になってますが発注
出来るのは黒のみだそうです。
用尺120㎝
手描きオリジナルアート
写真を元に絵を描き足します。
(見本は帯のタレ先に描いたもの)
※人物は対象外
仕上がり大10㎝程度
金額及び詳細についてはメールにて
お問合せ下さい。
カビ考学 カビ、実は怖かった!
人間が生活する環境、衣食住の全てで
カビは発生します。
皆さんの大切な着物にも、当然カビは
しっかり生えてしまいます。
カビが発生する条件としてよく言われ
るのが温度・湿度・養分・酸素です。
これらがタップリあるとカビは喜んで
生えるのです。
そもそも「カビ」とは何ぞやと言うと
生物を動物、植物、原生生物の三つの
カテゴリーに分けた、キノコや酵素と
同じ原生生物の「真菌」というもの。
ではどこに生息しているのかというと
この空気中に浮遊しているのです。
つまりカビの元となる真菌、コレ実は
身の回りにすでにアチコチ漂っている
のです。
漂っているのは丸い形をした「胞子」
の状態で、それが辿り着いたところが
上記の4条件に合致した場合に、手を
出し足を出し成長して、あのカビの姿
になるのです。
温かくて湿っぽくて、食べ物(繊維)
いっぱい。イエーイ!って感じで、
閉めっぱなしのタンスの中は、カビに
とっては、まさしく天国でしょう。
もっとも、この4条件が揃わなければ
逆にカビは発生しにくい。
ならばこのどれか1つでも防いでしま
えばよい、と言うことにもなります。
そこで効果的なのが「除湿」です。
除湿は乾燥剤を入れるだけなので、
簡単に湿度管理が出来ます。
着物の保管には乾燥剤を用いて、
常に乾燥させるようにします。
また最近は、気密性の高い着物専用の
収納袋もあるので、そういった商品を
上手に利用するのも良いでしょう。
このようなカビの発生を防ぐ処置は、
着物を管理する上で必要不可欠なもの
と言えます。
と言うのも、カビがもたらす悪影響は
実はかなり重いものです。
カビが生えるのは身近なことなので、
それほど驚くことはないと思いますが
一旦カビを生やしてしまうと、それを
落とすのは非常に困難なのです。
カビは胞子で付着すると、繊維の中に
菌糸を伸ばし成長しますが、初期の段
階ではほとんど分かりません。
カビが生えていると気づく、つまり目
視で確認できた時点で、白カビ、黒カ
ビに限らず、すでに繊維内に十分根が
張っている状態なのです。
そうなると丸洗いだけでは落とせず、
併せて有機溶剤や水を使ったしみ抜き
加工が必要になるケースがほとんどで
しかもそれでも完全に落とし切ること
は出来ません。
そしてカビが厄介なのは、繊維内に残
っていた菌糸が成長して、再びカビに
なる可能性があるからです。
布地特有の、複雑で広範な繊維組織が
カビの除去を困難にしているのです。
シミ・汚れ・変色等、着物の修復加工
は、通常一度加工すれば元に戻るよう
なことはありません。
しかしカビは再発の恐れがあります。
そして面倒な事に、白っぽい地色だと
殆ど分からない、見えないのです。
また、白カビは拭いてしまうと落ちた
ように見えますが、生地に侵食した菌
糸は繊維組織をを徐々に蝕みます。
やがて茶色く酸化が進み、生地全体が
ボロボロに傷んでしまい、こうなると
もう直す手立てはありません。
更にカビの害が恐ろしいのは、重なり
合う着物にも菌が移り、同じように侵
食が進み、遂にはタンス全体に感染が
広がってしまうのです。
その意味で、シミ・汚れが外科的症状
だとすれば、カビは内科的な、しかも
悪性の難病と言えるかもしれません。
しかも完治しません。
カビは、一度罹ったら二度と治らない
恐ろしい不治の病だったのです。
ほら、怖いでしょ?
「古典的条件づけ」的な夏
今年の夏は梅干しを漬けてみました。
そんなにあってもしょうがないから
1kg。この量だとフリーザーバック
が使えます。
まだ黄味が残る、漬けて3週間目位が
梅の味が残ってて美味しい。
これはもう自分で漬けなければ
味わうことはできません。
ううっ、キーボードたたきながら
「パブロフの犬」状態。
ちょっと塩が多かったかな、
来年は減塩で行きましょう。
たんす診断
先日久々に「たんすコンシェルジュ」
の訪問を再開しました。
たんすコンシェルジュとは、ご自宅に
訪問してお手持ちの着物の状態確認、
必要なメンテナンスの判断、またそれ
ぞれのニーズに合わせた、お手持ちの
着物の活用方法の提案等をアドバイス
するサービスです。
コロナ渦で暫く中止していました。
コンシェルジュで訪問すると、その依
頼された方々に、ある共通する雰囲気
があります。言うなれば困惑、戸惑い
のようなものでしょうか。
初めは私への警戒感かと思いました。
しかし、それが足の踏み場もないほど
広げた古いたとう紙の山に、ほとほと
困り果てた青息吐息の気持ちの表れで
あることは、すぐに理解できました。
実際、コンシェルジュを申し込まれる
方のほとんどの依頼が、大量に抱え込
んでいる着物の整理なのです。
それは え、コレ全部!?と、
思わず心の中でつぶやくほど。
元より、来店される方の場合はこうし
たいという目的がはっきりしてますが
コンシェルの依頼はどうしていいか分
からないから、ですので次元が違う。
兎にも角にもそのたとう紙を一つ一つ
紐解き、中の着物を確認することから
コンシェルの仕事は始まります。
たくさんの着物を、どのように仕分け
るのか。実はその前に確認することが
あるのです。着るか着ないかです。
え?って思うでしょ。
中にはいらっしゃるんです。
きもの着ますか?
いやぁ着ないんですよ。
ですから価値がありそうなモノだけ
選んでもらえれば・・・。
過去にありました。
で、このような依頼の場合は、
その時点でコンシェルは終了です。
たんすコンシェルジュは着物を生かす
ための処方箋の提案であり、値踏みや
買取り、リサイクルの紹介等は行って
ません。もっとも余程高額の、しかも
証書の付いた作家物のような品でなけ
れば、今は買取りも難しい時代です。
私は着たいし、活用したい。
その思いがあれば、そこからその方の
家族構成、希望や意向に沿って、
着物一つ一つを選別していきます。
残すもの、利用価値があるものと無い
もの、意向に合わないものをしっかり
分け、必要なものだけを残します。
そのためには、自分にとっての着物と
は何か、ということを、しっかり自覚
することが大切です。
別にむずかしいことではありません。
自分が着物を着るなら、どんな時に、
どういうシチュエーションで着たいか
その為にどんな着物を合わせようか。
色々夢想してみればいいんです。
着物が着たいのであれば出来るはず。
それさえ想い描ければ、あとはそれに
照らし合わせて選ぶだけです。
ただ、選べるものは、
そんなに無いかもしれません。
たとう紙を紐解くたび、
イメージとかけ離れることに
あなたは困惑するかもしれません。
でも大丈夫。あなたには、
コンシェルジュが付いています。
持ち駒を生かし、過不足を補い、
出来る限りあなたの意向に沿う
アレンジメントの提案をいたします。
だからもう、
心配することはありません。
例えどれほど古いたとう紙の山に埋も
れても、あなたはもう青息吐息は吐き
ません。あなたが吹くのは口笛です。
そう、青息吐息は
古いたとう紙の山と一人格闘する
コンシェルジュでした。
彼は仕事に忠実なのです。
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