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はじめに

きものを着る機会があるのだが何を着たらよいのか

きものや帯、小物の組み合わせが分からない。

日本の正装 黒紋付

喪服と黒紋付の違い【紋の継承】

コート

留袖-黒留袖と色留袖

訪問着

織りのきもの

帯について

小紋

色無地

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はじめに

 きものは日本人の民族衣装です。生まれてからほとんどを洋服で暮らしてきた若い人たちや、ライフスタイルそのものが昔とはまるで変ってしまった現代人にとっては、洋服なら自分で選べるというのに和服の事は何も知らない、まるで異邦人のような感じの場合が多いのではないかと思います。しかしまた一生きものを着ないで済ませるというまでには、なかなかいかないのも事実です。冠婚葬祭を例にとっても、葬においては喪主はやはり喪服を着ますし、一生に一度の晴れ着を見せる慶事の装いや、国際的なパーティーなどにお招きを受けたときなどは、きものほど豪華なコスチュームは他にはありません。日本人を最高に美しく演出してくれるものといえば、やはりきものなのです。

 きものと洋服の基本的な違いはどこなのでしょうか。洋服の場合は曲線で体を覆うように作られていますので、デザインの変化はシルエットで見せます。ところがきものはすべて直線裁ちで、ほとんど直線に縫います。ですからシルエットではなく、布地に表現される色や柄がデザインになるのです。そしてこの直線裁ちというのは、布を無駄なく最大に使う事ができ、ほどけばまた元通りの長い生地になりますので、染め直しも、仕立て直しも出来るわけです。さらに紐だけを使い、曲面の人間の身体を包み込んで巻くわけですから、多少の体型の変化もカバー出来るという、非常に機能的かつ合理的に出来ているのです。素材や調和などが分かれば、それこそ自由自在の着こなしが出来るわけです。

 生活の質の変化により、衣生活も豊かになり、多様化していきます。美しいきものを着る事は、その人のゆとりを表現する事になります。本物の、優雅な染色品を身に着けること、それは日本の伝統を身に着けていることに他なりません。きものは日本人の民族衣装です。そして民族衣装は、その国のことばです。きものを知っておくことは、あなたのアイディンティティのひとつなのです。

きものを着る機会があるのだが、何を着たらよいのか

昔に比べてきものを着る機会が少なくなったという声をよく耳にしますが、きものを着る機会は今も昔も基本的には変わりません。ただ、きものを選択するかどうかということなのです。ここではきものと冠婚葬祭との関わりを、きものビギナーの方向けに分かりやすく、さらに今日的視点(独断と偏見?)でご説明いたします。

■結婚式(挙式に出席)

きものを着る機会として真っ先に思い浮かぶのが結婚式です。お母様の立場なら黒留袖(地色真っ黒の紋のついた裾模様の着物)。姉・妹の立場なら振袖や訪問着というのが一般的です。

結婚式

振袖は成人式のもの。訪問着、これは付下げと並んできものビギナーにはチョット分かりにくいかもしれませんが、アバウトに言うなら全体の小柄模様のものを小紋(普段着)、裾や袖など部分的に柄が付いてるものを訪問着(付下げ)と理解していただければ結構です。もちろん結婚式に不向きな柄もありますのでご注意を。

結婚式 帯

では叔母やおばあさまの立場では何を着るか。問い合わせでも多い質問ですが、結論からいうと叔母の立場では訪問着か黒留袖、おばあさまは色留袖か黒留袖となります。これは立場的に出しゃばらず、軽んじず、というビミョーさからくるもので、その姻戚関係の濃さ、日頃のつき合いの有無、ご主人が長男か次男かなど、その決定要因は個々により異なります。

要はそれぞれの状況に合わせて、出来るだけ調和を図ることが大切です。ただおばあさまの場合、特に身内にお孫さんが多い方の場合は、色留袖であると比較的どのようなシチュエーションにも対応出来、便利なようです。また結婚形態も現代は様々で挙式を海外でする人も多く、例えばニューカレドニアでの挙式と日枝神社を同じ装いでとはいかないわけで(いってもいいんですが)、すべてにきもののしきたりを当てはめるのは無理があります。

■結婚式(披露宴のみ)

友人として出席する披露宴の場合ミスは振袖、ミセスは訪問着というのが一般的です。しかし現在では披露宴も多様化に伴いよりカジュアルになりつつあるようで、極端に羽目を外さなければ、披露宴はきものを楽しむ絶好の機会だと思います。

結婚式(披露宴のみ) 結婚式(披露宴のみ)

例えば若い頃に作った訪問着。
派手になってもう着られないと思っていたそのきもの、披露宴に着てください(寸法がまだ合うなら)。茶の間では違和感を覚えたその色も、披露宴会場なら華やかに映るのです。仮に注目されたとしても、あなたの個性を肯定こそすれ、あなたの存在を否定する人はいないはずです。

カジュアルなレストラン形式の披露宴なら、振袖や訪問着じゃなくても、あなたの若さは表現できます。きものは着ているだけで、洋服より改まって見えるもの。そして仮にそのきものが無地や小紋であっても、例えば帯を変わり結びにしたり、小物合わせを工夫すれば、洋服よりはるかに華やかに装えるのです。あなたがきものを楽しんで着ている姿は、ご年配の方からも好感を持って受け入れてくれるでしょう。

普段は着られないもの、着たかったものが着られるのが結婚式です。

■お宮参り・七五三・入学式・卒業式

実は結婚して子供が出来てからの20年間ぐらいが、一番きものと縁遠くなる時期なのです。そうですよね、子供に手がかかってそれどころじゃない。ところが、その手のかかる子供絡みの行事できものを着る機会、というのが多いのもこの時期です。それがお宮参り・七五三・入学式・卒業式です。

考えてみれば着る機会としては非常に多いのです。女の子だったら十三参り入れて10回。子供の数によっては相当多くなる。昔の人は全部きものを着ていたんです。冒頭でも触れましたが、きものを着る機会が減ったのではなく、自分でスポイルしているだけなのです。

それはさておき、一般的にこれらの行事に着るきものとしては、母親・姑とも無地や訪問着とされています。子供の成長を祝う通過儀礼ですので、装いも改まってというわけですが、何を着るかはチョット別な理由で決まります。つまり何を持っているか、言い換えれば結婚のとき何を作ったか、実際にはそれを着るのです。
実は結婚のとき作ったきものを、子供のお宮参りや七五三で始めて着る方は意外に多いのです。ですから訪問着の代わりに色留袖を作った場合は色留袖を着る人もいます。写真に残りますので、後で後悔しない装いであれば基本的には何を着ても良いと思います。また入卒も手持ちのきもので十分です。

■結納

結婚形態の多様化に伴い、結納も行わないケースが最近は多くなっているようです。また行うとしても仲人を立てず、両家同士のフランクな形にすることが多いようです。結納は男性側主導の儀式で、女性側は言うならば受身になります。ここは一番、かわいさ・初々しさを(無理にでも)演出するために振袖を選びましょう。そして、結納は振袖を着ることの出来る最後の機会なのですが、それは同時にご両親に振袖姿を見せることが出来る最後の機会でもあることを付け加えておきます。なお、振袖以外だと訪問着までで、それ以外はくだけ過ぎてお勧めできません。またお母様は、女性側は訪問着、男性側は訪問着か無地が無難です。

■茶会茶会

ひと口に茶会といっても、数人の少人数のものから数百人規模の大きなもの、内容も初心者で洋服でも参加できる「大寄せ茶会」から、4時間かけて行われる本格的な「茶事」まで様々あります。ですから茶会の装いはその席の趣旨に合わせることが大切なのですが、どんな茶席にもそつなく使えるとしたら、一つ紋の入った無地のきものが最適です。お茶=無地と覚えておいてください。また、お茶を本格的に始めるにしても(茶会用のきものとしては)無地があれば十分です。それから先は(何が必要かは)先輩や先生が教えてくれるはずです。

■不祝儀

最近はブラックフォーマルが多いようですが、喪主の立場ではやはり喪服は必要です。
黒の五つ紋付の無地に黒の帯、帯締め、帯揚げ、草履バックと、すべて黒で統一しますが、足袋と半衿、長襦袢は白になります。通夜・告別式から一年忌まで喪主は喪服を着ます。

喪主以外の参列者や回忌法要(法事)では略喪服が一般的です。略喪服とは地味な色の無地に、喪服用の帯や小物を合わせた装いで、色はグレー、紫、紺など、赤系統は除きます。とはいえ、なかなかもう一枚とはいかないのですが、昔流行った黒紋付の羽織、これを着ると不思議に不祝儀っぽくなるので、こういう機会には便利です。

不祝儀は祝儀よりもフォーマル性が強くなり、誤った組み合わせは失礼になりますので冒険は止めましょう。

■観劇やプライベートな集まり

一般的には上記以外のきもの、つまり紬や小紋となりますが、着たければ何でも結構です。

きものや帯、小物の組み合わせが分からない。

帯 和服の装いは、きものと帯の組み合わせだけでなく、長襦袢や帯締め・帯揚げ、草履や重ね衿、半衿といった小物を含めた組み合してそれぞれにフォーマルやカジュアルといった格、様々な柄・色目、材質があり、そのマッチングも考えなければなりません。そのため一遍に関連づけようとすると分からなくなってしまいます。そこで、先ず自分がどういう場所にきものを着ていこうとしているのか、そこに何を着ていくのか、ということをはっきりさせることが必要です。

ここで大切なのは着ていく場所の格にきものを合わせること。フォーマルな席にはフォーマルなきもの、カジュアルな場所にはカジュアルなきものを合わせるのです。きものの組み合わせで一番大切なことは、この格を合わせるということです。

例えば友人の結婚式に招待されたとします。あなたが仮に訪問着と小紋のきものを持っていたとしたら、あなたが出席する披露宴はフォーマルな席ですから、フォーマルのきものである訪問着を着ます。それがもし、気の合う友達同士で懐石料理を食べに行くのなら、よりカジュアルな小紋となるわけです。そしてきものがフォーマルであれば帯、小物もすべてフォーマル、カジュアルであればすべてをカジュアルなもので統一することがポイントです。

帯小物

 

 

 

和服はきもの・帯から小物まで、すべてフォーマルとカジュアルに分けることが出来るので、それさえキッチリ見極められれば、きものと小物の組み合わせは8割方終わりといっても過言ではありません。残りの2割は色・柄の組み合わせですが、これは経験と好みの問題です。では、どのように見分けたらいいのか。実際には経験によるところが多いのですが、ごくアバウトにポイントに挙げるとしたら、模様に金(刺繍・箔)が使われているかどうか、ということです。これはきもの帯、小物全てにいえることですが、金を使ったものは比較的フォーマル系のものが多いようです。   帯小物

帯

日本の正装 黒紋付

黒紋付 黒紋付は、世界にも冠たる日本の民族衣装であり、時代を超えた日本の正装です。
 昨今、男女を問わずブラックフォーマルと称する洋装を、正装として慶弔双方に用いることが一般化されていますが、日本においてはあくまで略礼装であり、正装には成り得ない存在です。日本の正装は、各家に伝わる家紋を染め抜いた黒紋付のほかになりません。
 女性の第一礼装である喪服は、黒紋付染め抜き五つ紋に黒共帯です。長襦袢・半衿・足袋以外は、すべて黒で統一します。長襦袢は白ちりめん又は白紋りんず、半衿は白羽二重、帯揚は黒無地。帯締は黒羽二重の丸くげ紐でしたが、今では黒の組紐が多くなっています。なお、未婚の女性は白の帯揚、帯締にしても良いとされています。足袋は白キャラコの4枚コハゼ。履物は黒の布製が正式です。

■正式喪服は黒紋付、準喪服は色無地一つ紋

 故人とさほど親密でない人が黒紋付を着ると少し大げさで改まりすぎる事があります。そういう場合には準喪服として色紋付を着用するのが良いでしょう。色は派手なものを避け、控えめで落ち着いたものを選びます。紋は染め抜き紋よりも縫い紋の方が控えめです。帯は喪服の黒共帯。

■喪主・遺族は、正式喪服を着るのが基本

 喪主・遺族は葬儀・告別式では正式喪服を着用します。故人の親近者も正式喪服を着用した方が良いでしょう。喪服・遺族の装いの基本は、参会者よりも軽い服装いなることを避けることです。

■列席者は、準喪服でさしつかえない事も多い

 葬儀・告別式に参列する際の衣服は、いろいろと悩む事も多いものです。無論、正式喪服を着るのが礼儀ですが、故人とさして親しくないような間柄ならば、色無地一つ紋付に黒帯の略礼装でさしつかえありません。

■数珠や喪章も必要ですか?

 仏式の葬儀や法要では、数珠は必需品です。また喪章は遺族が服喪中である事を示すもの。しかも、洋装に限られて用いられます。一般の参列者が黒ネクタイ代わりに喪章を付けているのは、本来の使われ方にそぐわないものです。もちろん、和装の場合は男女ともに不要です。

■不祝着の服はいつ揃えればいい?

 喪服はいつ用意すればいいか迷うもの。しかしどなたかは病気になったからといってあわてて作ったのでは、具合が悪いのでは…。やはり喪服はなるべく早い時期に作っておくのがマナー。必要のない時こそ作りどきです。

■法要の装いは、年とともに略してよい

 葬儀後の法要では、初七日から四十九日、一周忌から三回忌、七回忌以降の三つの時期がひとつの目安になります。故人の遺族・近親者の場合は四十九日迄はもちろん、三回忌頃迄は正式喪服を着用するのが良いでしょう。いずれの場合も故人への例を忘れず、忌の心をあらわす装いを心掛けるようにしたいものです。

■宝石・アクセサリーはすべてダメですか?

 光ものを避けるというのが、悲しみの装いの約束事です。パールの指輪も和装では用いないのが無難です。例外はミセスの結婚指輪。石のあるものは、内側に回してリングだけを表にすれば失礼になりません。

喪服と黒紋付の違い【紋の継承】

紋 黒紋付というと、すぐ喪服のことと思われるかもしれません。確かに喪服としてお黒紋付は着ますが、黒紋付イコール喪服ではありません。黒紋付とはその名の通り黒い紋付の無地の着物のことで、それ自体は色の無地の紋付と何ら変わりはないのです。つまり合わせる帯や小物によって性格付けがなされ、それが黒い帯や帯締帯揚であった場合に初めて喪服になるのです。実際にお琴や尺八といったお稽古事の大会などでは、黒紋付に銀地の帯や紫の袴を合わせて舞台用の衣装として用いてます。黒紋付を喪服としてだけで考えますと、今は着ないから必要ないとか、まだ若いから早過ぎるなどと思いがちですが、嫁入り支度としての黒紋付にはそういう事ではなく、いわば「紋の継承」という、全く別の意味があるのです。

 紋(家紋)といっても普段はあまり意識されたことはないかもしれませんが、これはどこの家にも必ずあるものです。もともとは平安時代、御所に参勤するときに乗っていた牛車の目印が紋の始まりといわれており、戦国時代には群雄割拠した武将の戦旗や陣幕に描かれ、その頃から身分の証や主従の関係という、精神的なつながりを表す印として使われ出しました。代々伝わる家の名を家紋として継承し始めたのもこの頃からで、子供が成人すると幼名の代わりに家の名を継がせる「元服」も親から子へ家名を託し、未来永劫まで栄えてほしいという、いわば「血の継承」だったのです。平成の今日では「血の継承」もちょっとオーバーかもしれませんが、その意味でいえば、二十歳の成人のときこそ振袖ではなく黒紋付を作って、成人した○○家の一員としての自覚を促し、晴れて一人前の社会人として世間から認められた事を祝福してあげるべきなのでしょう。

 時は流れて時代は変わっても、子を思う親の気持ちは変わらないし、子に託す親の思いも変わりません。嫁ぎ行く娘の、これから歩んでいく人生が幸せなものでありますように。かわいい少女がすくすく成長して成人になり、立派な○○家の人間として嫁ぐとき、親として今まで与えてきたすべてのものを、そしてその与えられた全てを愛情に変えて、今度は妻として母として、愛する夫や子供やご両親に捧げてほしい思う気持ちを、直径で2、3センチの家紋に託すのです。そしてご両親の手から離れ、新しい人生を歩みはじめるお嫁さんへの、最後の嫁入り支度としてお渡し下さい。そのとき初めて、お嬢さんは○○家の人間としての自覚と、ここまで育ててくれてありがとうというご両親に対する感謝の気持ちを、きっと素直に感じてくれる事でしょう。黒紋付は、ご両親とお嬢さんをつなぐ、形に残せる唯一の絆なのです。

コート

コート 洋服と同じように、きものを外出するときはコートが必要です。後になって必要と感じ、あわてて作る方もいますので、きもの一式を揃える時に一緒に作っておくとよいでしょう。ひと口にコートといっても、きものの場合、道行コート、防寒コート、雨コート、礼装コート、おしゃれコート、道中着などいろいろな種類があるのですが、基本的に用意しておきたいのは、このうち道行コートと雨コートです。

 道行コートは別名「被布」といい、これは戦国時代の旅行服に端を発し、角か丸の衿に竪衿(たてえり)をつけて打ち合わせるように仕立てたもので、このかたちは紬を取ると祝着のの被布になります。柄ゆきは巾広く、フォーマルからカジュアルまでさまざまですが、より無地に近い方がフォーマルに向きます。
 道行コートは袷仕立てで、時期的には10月から5月頃まで着ます。最近、きものはホテルなど屋内で着る事が多く、なかでも自宅からホテルまで車で直行してしまう、いわゆる”Door to Door"の場合は、コートを着なくても帯付き姿で十分なのですが、徒歩を含めそれ以外の移動にはやはりコートは必要です。この場合は防寒用というよりも、きものや帯の汚れを防ぐためという意味です。

 コートの素材としては、ちりめんやリンズ地から西陣織り、ベルベッドなどこれもさまざまなものがありますが、一般的にはやや張りのあるリンズが変り織の生地で、比較的色目の濃い無地かぼかし染のものを持っていると合わせやすく便利です。そして万一のために、防水加工をしておくと更に安心です。
 きものを着るとき、雨が降ったらなくてはならないのが、雨コートです。雨コートの生地は、防水加工を施した西陣織のものが一般的ですが、紬地などに防水加工をして、長めのコートにしても素敵なものができます。雨コートは単衣仕立てで基本的にオールシーズン着られます。色柄はさまざまなものがありますが、雨の日の装いですから明るめの物を選んだ方がよいでしょう。かたちは道行衿の、足の甲がすっぽり隠れるほど長い対丈のものが一般的ですが、身丈を調整できる二部式のものや、小さくたためる携帯用のものなどもあるので、上手に使いわけるとよいでしょう。

留袖-黒留袖と色留袖

黒留袖 黒留袖はミセスの第一礼装です。黒地のきものの5か所(背中央、両袖の後側、両胸)に代々伝わる家紋を染抜き、裾の方だけに模様をつけた祝儀のためのきものです。「留袖」の由来は、振袖の長い袖を「切って留めた」という意味、または黒は変わらぬことから、終生変わらず婚家に留まる、という意味で留袖と呼ばれたとも言われています。
 留袖の裾模様は松竹梅、鶴亀などの吉祥文様(おめでたい柄)や拡張高い古典柄が(下着)を重ねて着たのですが、現在では二枚重ねて着ているように見える比翼仕立てという仕立て方をします。

 色留袖は黒留袖と同格のミセスの礼装です。柄は黒留袖と同じ格調高い裾模様ですが、地色は好みの色が自由に選べます。色留袖も正式には五つ紋を付けますが、結婚式や叙勲式以外なら、紋を略式の三つ紋(背中央、両袖の後ろ)や一つ紋(背中央のみ)、または紋を付けずにおくと、お呼ばれの席やインフォーマルなパーティーまで幅広く着る事が出来ます。仕立て方も、正式には黒留袖と同様に、比翼仕立てにしますが、略式の一つ紋には比翼をつけずに仕立てて、訪問着と同じように重ね衿を使った色合わせを楽しむ事が出来ます。

色留袖

 帯は黒留袖、色留袖ともに、格調のある袋帯を合わせます。飽きのこない古典柄などがよいでしょう。帯締めは白か、白地に金銀糸を織り込んだもの。帯揚げも白、もしくは白に金銀糸をあしらったものを。半衿は白の塩瀬。長襦袢や足袋もすべて白にします。また、色留袖をパーティーに着る場合は、帯締め帯揚は白に限らず、訪問着と同じように淡い色のものを用いても素敵です。

  黒留袖に欠かせないのが、末広と呼ばれる表裏が金銀で、黒骨の礼装用の扇子。持つときは右手で要の部分を持ち、左手で軽く受けます。帯に納めるときは、帯中央により左側に、要を下に先が3センチほど出るように差し込みます。またハンドバッグは錦やビーズの小さめのものが上品ですが、ふくさが入る大きさがより実用的。草履や錦製や、金銀の革製のものを。

訪問着

訪問着 訪問着は、洋服にたとえるとカクテルドレスに当たります。社交着として結婚式、披露宴、お見合い、結納、お茶会、パーティーなど、大抵の場所に着ていける応用範囲の広いきものです。訪問着にはミスとミセスの区別はありませんから、留袖や振袖を着るほどではないけどやはり改まった装いで、というときの略礼装になります。また、一つの紋を付けると格が上がり、準礼装として着ることができます。

 訪問着は肩、袖、胸などの模様が、一枚の絵画のように決めてあるきものです。これを絵羽模様といい、はじめに白生地を寸法に合わせて断ち、仕立て上がりの寸法に仮縫いした、仮絵羽という状態で下絵を描いて決めるため、複雑な柄でも縫い目をはさんでぴったり合います。これに対し、付下は仮絵羽ではなく反物の状態のままで決めます。柄を訪問着を選ぶなら、やはり幅広く着られる古典柄が無難です。

 帯は袋帯を合わせます。袋帯にも様々な柄がありますが、きものが古典柄なら帯も古典柄、モダンならモダンと、必ずきものと帯を同系の柄行きで合わせられるようにします。長襦袢は薄めのぼかし柄などを選べば、きものの地色に左右されません。
 訪問着の着こなしのポイントとなる小物が伊達衿です。この衿ひとつで、きもの全体の雰囲気が決まるといっても過言ではありません。基本的には左胸の柄中の一色を用いますが、色選びは慎重にしたいものです。
 また、訪問着で結婚式に出席する場合は、白の伊達衿を使いますと、おごそかで改まった雰囲気になります。帯締めは平の組紐、帯揚げはリンズのぼかし、部分絞り、箔使いのものを合わせます。草履とバックはセットになった佐賀錦や革製のものが一般的です。また、草履はかかとのやや高いものを。バッグはデザインだけでなく、たとえばふくさが入るかどうかなど、実用性も考慮して選びたいものです。

織りのきもの

織りのきもの 染めのきものは都市で染められている場合が多いのですが、織りのきものは日本全国の、あらゆる地方で織られています。特に養蚕地ではくず繭が出て、それに商品価値が認められないため、そのくず繭を紡いで自家製の晴れ着をつくりました。それが現在各地に存在している「紬」です。
 織りのきものには繭や真綿(玉繭などから作った綿)から手で糸を紡いで作る紬、綿花の綿を紡いで織る木綿、繭から引いた糸で特殊な撚り糸を作って織る御召、植物繊維の麻や藤曼などを割いた糸で織る、自然繊維のきものなどがあります。

 紬の中では真綿から手で糸を紡ぐ「真綿紬」がもっとも古く、昔の紬はほとんどがこの糸を使っていました。代表的なものが結城紬です。現在では繭から直接糸を紡ぐ方法が主流で、機械を使って繭から糸を引き、何本か撚り合わせて一本の生糸をつくります。この生糸を使って織った紬の代表的なものが大島紬です。また、この糸を右や左に強く撚り、高熱で縮ませた糸で織ったものを御召といいます。

 ひと口に織りのきもの、染めのきもの、と言いますが、これは糸の状態で染めるか、白生地に織り上げてから染めるか、の違いと言えます。径糸と緯糸が、それぞれ織り上げたときに同じ色、同じ位置になるよう、糸の段階から決められた紬は、その手間と高度な技術のため、一般的に高価です。しかしどんなに高くても、紬は礼装にはなりません。その生い立ちから、あくまでも普段着なのです。
 朴とつにて優美、堅牢にて繊細。織りのきものは、きものの原点です。

帯について

帯 きものは帯なしではまとまりません。帯を結んではじめて、きものの姿となります。同じきものでも、帯の合わせ方次第で大きく印象が変わります。その意味で、帯合わせはきもの姿を左右する要といえます。帯ときものの関係で大切なのは「同格にする」という事です。一般にきものが礼装の場合は袋帯、おしゃれ着や町着には名古屋帯となりますが、礼装には向かない袋帯もあれば、格の高い名古屋帯もあり、同じ種類だからといって帯合わせも同じとは限りません。帯ときもののコーディネートは、そのどちらにも格付け、色柄があるため、実物を取り合わせてみる以外に確実な方法はありませんが、ここでは合わせ方のポイントを袋帯と名古屋帯に分けて説明します。

 袋帯は、もともと礼装用として使われていた丸帯に代わって、昭和の初め頃から使われるようになった帯です。別々に織った表地と裏地を縫い合わせた状態で、幅8寸2分(31センチ)、長さ1丈1尺(4メートル17センチ)あり、全通(帯全体が柄)、6通(6割に柄)、太鼓柄(太鼓部分と前髪にだけ柄)の3種類の柄付のものがあります。現在の袋帯は、留袖などの礼装用からおしゃれ用まで、織りの帯、染の帯など、様々な種類が作られています。これらの基本的な違いは格付けで、技は技法や図案によって区別されます。

 第一礼装の留袖には錦、唐織り、綴などの重厚な織りで、吉祥文様や幸菱、七宝といった格のある柄のものを選びます。金地、銀地、または薄めの地色が礼装には合いますが、さらに帯柄の色調を、留袖の裾柄の色調と合わせるとバランスが取れます。
 訪問着や無地などは着用範囲が広いので、例えば、祝儀の席には留袖用の帯、インフォーマルなパーティーならしゃれ袋と、着る目的に合わせて帯の格を変えます。一般に古典文様はフォーマル、抽象柄や趣味性の強い柄はインフォーマルで、金糸、銀糸、箔使いが少な帯くなるほど、おしゃれ感が強くなっていきます。
 小紋や紬類には、金銀を使わないインフォーマルな柄付けのもの、または紬、染め、刺繍などの袋帯を合わせますが、同じ小紋でも、例えば友禅の小紋には古典文様の袋帯、大島の訪問着なら箔の帯でも合いますので、やはりそれぞれの柄の雰囲気を互いに重ねてみることが、確実な帯合わせのポイントといえます。

小紋

小紋 型染めのきものを総称して、小紋とよんでいます。訪問着や付下を着ていくほどではないけれど、ちょっとしたおしゃれをしたいとき、たとえば、気楽なお茶席やおけいこ事、クラス会、お正月やお出掛けの時など、小紋はとても貴重なきものです。
 ひと口に小紋といっても、江戸小紋、京友禅小紋、加賀小紋、紅型小紋や更級小紋など、その種類は豊富です。洋服のプリント柄に似ていますが、きものの場合は柄によって格が異なり、着られる場所が違ってきます。たとえば、江戸小紋は徳川時代の武士の裃(かみしも)柄に由来する、格式が高い小紋で、一つの紋を付けて略礼装になりますが、趣味性の高い更級や紅型などは、紋を付けないもので、これは100パーセントおしゃれ着です。

 京都で決められる華やかな京友禅小紋、金沢で染められるしっとりとした優しさの加賀友禅小紋、東京で決められる洒脱な江戸小紋、鮮やかな色彩が魅力の沖縄の紅型小紋など、小紋には地域の特徴を生かした味わいがあります。
 小紋のようなおしゃれ着は、帯や小物のコーディネートでさまざまな着こなしが楽しめます。改まった席には袋帯で格を高めて、おしゃれに装いたいなら、名古屋帯や染め帯を合わせます。
 帯締や帯揚げは小紋の格に応じて合わせますが、小物の色を効かせて個性的に装うのも小紋ならではの楽しみ方。色半衿や刺繍半衿、伊達衿や裾回しなど、気を配った取り合わせはおしゃれの幅を一段と広げます。また、小紋に合わせるバックはあまりきらびやかなものは避け、草履やかかとのやや低めのものがよいでしょう。

色無地

色無地 色無地は、模様のない一色で決めた無地のきもので、TPOによって着分ける事ができる、着用範囲の広いきものです。
 一般に色無地には、背中に一つ紋を入れます。最近では、あまり仰々しくならない縫い紋の方が好まれますが、正式には染抜きの紋を入れます。また、背中と両方の袖の外側に入れる三つ紋にすると、無地でも紋のない訪問着より格が上の準礼装になります。

 帯はTPOによって格調ある袋帯から、おしゃれな名古屋帯まで合わせる事が出来、帯によって装いの格が変わってきます。無地のきものは帯が合わせやすく、また帯が引き立つきものです。
 色無地のきものはお嬢様のブライダル用のアイテムとしても、定番といわれるほど、必ずご準備されます。着ていける場所は非常に多く、紋を付けて結婚式、披露宴、茶会、お宮参り、七五三、入学式、卒業式、紋を付けなければお祝いの集まりや、パーティー、趣味の会と、それこそ何にでも着られるのですが、若い方が着る場合、柄が少ない分着る場所によっては、落ち着きすぎた感じに映るかもしれません。時代の流れとともに、そのニーズに微妙に変化しているわけで、最近では全くの無地ではなく、無地間隔といわれる細かい小紋調のものや、生地の風合を生かしたぼかし染めのものなど、おしゃれ着として着られるものを無地のきものとして用意される方もいます。尚、帯締めや帯揚げなどの小紋は、全て帯の格に合わせます。

 ジャパニーズ・トラッドとしてのきものには、現代でも守らなければならないルールがあります。小紋の代わりに訪問着を着れば仰々しくなるし、訪問着を着て行く場所に小紋では、失礼にあたります。小紋と訪問着のあいだの、中間的な性格の色無地は、どちらにも流用できる便利さという点では、持っていて損はないきものです。