ホーム>スタッフブログ>え、ドライクリーニングで色が落ちる?
スタッフブログ

え、ドライクリーニングで色が落ちる?

ドライクリーニングで(丸洗い・生洗

い含む)着物の色が落ちることはある

のでしょうか?

 

YESかNOで言えば、

答えはYESです。

 

ただし正確に言うならば、

「起こさない」ですね。

 

洗い加工をする場合、事前に試験を行

います。試験をして加工に支障がない

か、必ず確認をするのです。

 

なので、実際にはそのような事故は起

こりません(起こしません)。

 

もっともそのような事故に繋がる可能

性のある商品も限られていて、通常は

全く心配する必要はありません。

 

では、その限られた注意が必要な商品

とは何かと言うと、留袖と喪服です。

 

ご存じのように、留袖と喪服は黒い

染料で染められています。

この黒い染料に、実は問題があるの

です。

 

一般的に着物を染めるために使われる

染料は化学染料です。

 

化学染料(合成染料)は石油を元に科

学的に合成されたもので、安定した発

色性が得られることから、現在着物に

限らず広く使われています。

 

それに対して留袖と喪服は植物染料、

つまり草木染が主流となっています。

 

草木染は草木を煎じた液に金属を加え

発色させるもので、化学染料の発明以

前から行われていた染色法です。

 

化学染料には無い、深みのある色目が

徴で、これに薬品を加え化学変化で

より黒を際立たせる染色が、今日では

主流になっています。

「三度黒」や「藍下・紅下」等の名称

を聞いたことがあるかもしれません。

 

で、この黒、確かに真っ黒なのですが

実は非常にデリケートなのです。

 

化学染料に比べ堅牢度が低く、摩擦に

弱く、色の定着も悪い。

 

中には擦っただけで色が付く、触った

だけで跡が付くような物も(樹脂

工剤を使用している場合)あります。

 

真っ黒の喪服を仕立てたら、アイロン

の跡で真っ白になった、なんて冗談み

たいな話もあるのです。

 

また草木染は酸性染料なので、例えば

お酒等酸性の液体をこぼすと、変色

伴うシミになるので注意が必要です。

 

このように見た目だけで実用性が伴

ない品質は確かに問題ではありますが

現実としてそれに価値があると認識さ

いるのが実情なのです。

 

もちろん、ここで述べた事は極端な例

であり、すべての商品がそうである訳

はありません。

 

色が落ちる原因に、クリーニングに使

用した溶剤の品質に問題があったケー

スも存在します。

 

しかし黒染、草木染である以上、この

ような特性を持っていることは事実で

り、それを理解するということは

とて大切なことなのです。

 

 

今度、黒染の着物をクリーニングに洗

いに出ことがあれば、その前に一度

アルコールで擦ってみてください。

もしそれで色が付いてしまったら・・

 

 

202210816235.jpg

あちゃ~

 

 

人は失敗を重ね、成長するのです。