新企画▲きものトラブル事例集▼
きものは絹(シルク)というたんぱく質でできた繊維素材で、その発色のよさとなめらかさは他の追従を許しません。しかしそのデリケートな素材ゆえに起こる事故や故障もたくさんあります。あなたの日常にも起こりうる着物のトラブル、その事例と起こる原因を、今週より五十音順に取り上げ説明してゆきます。
あ行
汗
汗は日常生活でもかきますが、着物を着てかいた汗はちょっと面倒です。着物に汗が付くとどうなるか。具体的に挙げてみます。
①シミになる
汗をかくと濡れることで輪ジミができます。汗は98%以上が水ですが、それ以外にも塩化ナトリウムや尿素など微量な成分が含まれており、シミの部分は酸化作用が進むと黄変します。
②縮む
生地が濡れると濡れた部分の色が濃く見えることがあります。これは濡れたことにより生地が縮み(収縮)、陰影ができることで光沢異常を起こしている状態です。一越やちりめんのような生地で顕著に見られます。部分的な縮みなので、蒸気を当てたり水処理で縮みを均等にすることで直りますが、生地によっては残存樹脂の影響で陰影が直らず、いつまでもシミが付いてるように見えます。
③色泣き(色移り)
生地が濡れて、重なる生地の色が付着する現象です。親水性の高い絹ならではの事故で、胴裏に付くと落ちにくくなります。
◎汗のトラブルは軽視できません。黄変したシミは漂白を伴う染色補正が必要となり、費用が高額になったり、色によっては加工不能のケースもあります。汗のトラブルは早めの対処が必須です。
うっすら見える脇の汗ジミ。生地によってはただの陰影に見えるので注意が必要。
汗ジミは内側から生じるので胴裏を見るとよくわかる。
汗で表地の色が裏地に染み出したもの。
留袖の紋の黒が汗で長襦袢に色移りしたもの。
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