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たんす診断

 

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先日久々に「たんすコンシェルジュ」

の訪問を再開しました。

 

たんすコンシェルジュとは、ご自宅に

訪問してお手持ちの着物の状態確認、

必要なメンテナンスの判断、またそ

ぞれのニーズに合わせた、お手持ちの

着物の活用方法の提案等をアドバイス

するサービスです。

 

コロナ渦で暫く中止していました。

 

コンシェルジュで訪問すると、その依

頼された方々に、ある共通する雰囲気

があります。言うなれば困惑、戸惑い

のようなものでしょうか。

 

初めは私への警戒感かと思いました。

 

しかし、それが足の踏み場もないほど

広げた古いたとう紙の山に、ほとほと

困り果てた青息吐息の気持ちの表れで

あることは、すぐに理解できました。

 

実際、コンシェルジュを申し込まれる

方のほとんどの依頼が、大量に抱え込

んでいる着物の整理なのです。

 

それは え、コレ全部!?と、

思わず心の中でつぶやくほど。

 

元より、来店される方の場合はこうし

たいという目的がはっきりしてますが

コンシェルの依頼はどうしていいか

からないから、ですので次元が違う。

 

兎にも角にもそのたとう紙を一つ一つ

解き、中の着物を確認することから

コンシェルの仕事は始まります。

 

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たくさんの着物を、どのように分け

か。実はその前に確認することが

あるのです。着るか着ないかです。

 

え?って思うでしょ。

中にはいらっしゃるんです。

 

きもの着ますか?

いやぁ着ないんですよ。

ですから価値がありそうなモノだけ

選んでもらえれば・・・。

 

過去にありました。

で、このような依頼の場合は、

その時点でコンシェルは終了です。

 

たんすコンシェルジュは着物を生かす

ための処方箋の提案であり、値踏みや

買取り、リサイクルの紹介等は行って

ません。もっとも余程高額の、しかも

証書の付いた作家物のような品でなけ

れば、今は買取りも難しい時代です。

 

私は着たいし、活用したい。

その思いがあれば、そこからその方の

家族構成、希望や意向に沿って、

着物一つ一つを選別していきます。

 

残すもの、利用価値があるものと無い

もの、意向に合わないものをしっかり

分け、必要なものだけを残します。

 

そのためには、自分にとっての着物と

は何か、ということを、しっかり自覚

することが大切です。

 

別にむずかしいことではありません。

 

自分が着物を着るなら、どんな時に、

どういうシチュエーションで着たいか

その為にどんな着物を合わせようか。

 

色々夢想してみればいいんです。

着物が着たいのであれば出来るはず。

 

それさえ想い描ければ、あとはそれに

照らし合わせて選ぶだけです。

 

ただ、選べるものは、

そんなに無いかもしれません。

 

たとう紙を紐解くたび、

イメージとかけ離れることに

あなたは困惑するかもしれません。

 

 

でも大丈夫。あなたには、

コンシェルジュが付いています。

 

持ち駒を生かし、過不足を補い、

出来る限りあなたの意向に沿う

アレンジメントの提案をいたします。

 

だからもう、

心配することはありません。

 

例えどれほど古いたとう紙の山に

れても、あなたはもう青息吐息は

ません。あなたが吹くのは口笛です。

 

そう、青息吐息は

古いたとう紙の山と一人格闘する

コンシェルジュでした。

 

彼は仕事に忠実なのです。

 

 

 

丸染め加工

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紬のアンサンブルの丸染めです。

実物は写真よりもっと濃紺です。

朱の花は

 

 

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元はこんな色でした。

上のブルーの花は元は白、そこに丁度

そのブルーぐらいの色をかけました。

地色の紺はほとんど変わらず、

全体の色調を落ち着いたイメージに

変えることができました。

 

丸染めの醍醐味ですね。

 

 

 

 

 

 

 

放送事故

3月6日(日)放送のサンジャポで、

ウチの隣のぱんやパン屋さんが生中

で取材に来てました。

何でも芸能人2人とコラボした新作パン

を限定販売したのだとか。

 

当日の朝店長が、今度お持ちするので、

食べてみてくださいと挨拶に来ました。

 

実は少し前から、朝の仕込みの匂いが

変わっていたんです。

何かイタリア料理屋のような、

パン屋じゃない匂いが・・・

 

で、その中継が始まったのでシャメで

ろうと(なんせ隣だから)店先か覗

いてたら、これが何としっかり写っち

ったらしく、途端に知人からメール

での抗議が殺到してしまいまして。

ま、大した事故じゃあありませんが。

 

ちなみに今度お持ちする予定のパンは

まだ来てません。

 

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真っ黒な喪服を仕立てたら白く汚れた!

ありがた迷惑?な「深色加工」

 

 

呉服屋さんから、一番黒いと薦められ

た喪服地が、仕立てたら白くムラムラ

に汚れが付いてしまった、と言った話

を聞いたことがあります。

 

実はこの白いムラムラは汚れではなく

言わば「スレ」です。

 

 

現在の喪服地には「深色加工」という

黒の色がより濃く見える特殊な加工が

施されているものが増えています。

 

一般に物体は、当たった光の反射量が

多いほど白く見え、逆に少ないと黒く

見えます。

そこで反射量を減らして色を濃く見せ

るため、繊維表面に光の屈折率を下げ

る皮膜や、微細な突起で反射率を下げ

る樹脂加工等が施されているのです。

 

深色加工された黒は、確かにより黒く

見えますが、それは「見える」だけで

黒の色自体が濃いのではありません。

 

それゆえ、施された皮膜の状態が、何

らかの作用で変化を起こすとすると、

見え方も変わってしまいます。

 

 

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        「深色加工」の黒 強く触るだけで跡が付く

 

例えば、しみ抜きや丸洗い等の加工を

すると皮膜の状態が変化し、光の屈折

率が変わり、白っぽく見えます。

 

また皮膜加工された生地は、言うなら

ば非常にデリケートな状態なので、例

えば仕立て時のアイロンやヘラ等でも

跡が付き(微細加工が潰れ)、結果的

に反射率が変わって白いスレのような

状態に見えてしまうのです。

 

それは、生地の厚みの段差ですら、

ハッキリ浮かび上がらせるほどです。

 

現在流通している喪服地の多くが、実

はこのような加工が施されています。

 

いくら黒いからと言っても、腫れ物に

触るようでは実用的とはいえません。

 

黒さを求めながらも、扱い易さも加味

した商品が待たれるところです。

 

 

美容室は気をつけて!落ち難いヘアスプレーのシミ

よそいきの着物を着るため、頑張って

美容室(美容院・ヘアサロンなど色々

呼び名があるけど、違いがわからん)

でおめかしするとき、気をつけなけれ

ばならないのが、ヘアスプレーです。

 

美容室で着付けをする場合、普通なら

先にヘアセットを済ませます。

 

しかし着付け後にもう一度手直しして

最後にヘアスプレーで仕上げるという

場合もあるようです。

 

このとき、気をつけなければならない

のが、ヘアスプレーの飛沫です。

 

スプレーは本来ミストですが、最初の

ひと噴きで大きめの飛沫が飛ぶ場合が

あり、この飛沫が曲者なのです。

 

ヘアスプレーの主な成分は毛質保護の

為のたんぱく成分と、スタイリング材

としてのシリコン樹脂ですが、後者は

固めるための、言わば糊です。

 

これが落ちが悪い。

 

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一見すると水が跳ねたような、何でも

ないようなシミですが、触ってみると

カタいのです。

 

つまり、糊で固まっているワケです。

 

このようなシミの場合、含有する薬剤

の種類や、付着経過の差異によっては

落ちが悪く、仮に落ちたとしても思い

もよらぬ費用が掛かってしまうことに

なります。

 

ヘアスプレーは美容室に行かなくても

自分でかけることもあります。

 

着物を着てヘアスプレーを使う場合は

必ず肩回りにタオルを掛けましょう。

負けね~ぞ~!ってか。

朝の散歩で、ん!見かけねーなーと

思った植え込みが、

 

 

 

 

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でもすぐイチョウと分かったけど、

 

これだね、

 

 

 

 

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で、これをひこばえやら何やら

みんなで頑張って・・・

 

 

 

 

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こうしたわけだ。

なめんじゃねーぞおおお!

だって。

 

ハイ、よくできました。

 

 

 

 

 

きもの着た・・・そのあと、どうするの?

皆さんきもの着た後どうしてますか?

着るだけでも大変なのに、着た後の

始末まで考えるの、面倒ですよね。

 

2~3日ハンガーに掛けて、

そのまましまっちゃおうか?

クリーニング出したほうがいいの?

でも一度しか着てないのに・・・

じゃあ、どこに出したらいいの?

クリーニング屋さん?

それとも呉服屋さん?

 

どうしたらいいのか、

色々悩みますよね。

 

そこで、2つの事だけ、

確認してください。

たった2つです。

ここさえしっかり抑えれば、

あなたの大切なきものは、安心です。

 

ではその2つとは、

①先ず着物の状態を確認する

②着物を知る業者に依頼する

です。

 

当たり前のようですが、

実はとっても大切な事なんです。

また決して難しい事でもありません。

詳しくはコチラから。

 

きものは早めのお手入れが肝心です。

 

 

 

 

 

 

流行のママ振り最高!? で、再考。

コロナ渦の中、自粛モードで成人式も

ままならない昨今。その影響なのか、

最近巷では「ママ振り」なるものが、

静かなブームになっています。

 

「ママ振り」とは、文字通りお母さん

の振袖のこと。

 

母親や身内の着物を利用すれば、新た

に用意する手間も省け、家族も喜んで

思い出作りになり、古い着物なら生地

も加工もいいので友達と差別化出来て

何よりも安上がり!と。

 

まさにwithコロナに相応しく、またそ

れ以上の良いこと尽くめの利用法に思

えますが、果たしてそんなに上手く行

くのでしょうか。

 

 

元々着物はリメイク用の多様布として

の機能が高く、世代を超えて利用する

ことができます。しかしその為の維持

管理には、当然コストも掛かります。

 

リーズナブルだからこそ利用しようと

思う訳ですが、古い物であればある程

直す費用も掛かりますし、そもそも費

用が掛かるなら「ママ振り」をあえて

選ぶ意味もありません。

 

なので、余程条件が揃わなければ、

上記のような恩恵には与れません。

 

では、どのような条件が揃えばお母様

の振袖を有効活用出来るでしょうか。

その条件を大切な順に挙げてみます。

 

 

①母親と体形が同じ

②その振袖用の帯、長襦袢等がある

③その振袖をお嬢様が着る意思がある

④その振袖をお嬢様が着ることを

 家族も喜んでいる

 

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①母親と体形が同じ

 

先ずこの事が何よりも優先されます。

体形が違うと寸法直しが必要となり、

寸法を変えるとそれに伴う新たな修整

が必要になって、費用がかさみます。

 

②その振袖用の帯、長襦袢等がある

 

もちろんそれらを含め、全ての和装小

物が揃っていれば一番良いのですが、

少なくとも単価の張るこの2点が既に

あれば全体のコストを下げられます。

 

③その振袖をお嬢様が着る意思がある

 

そもそも論として、本人が着る意思が

なければ全ては始まりませんが、本人

は着たいのに体形が違い過ぎるため、

泣く泣く諦めるというケースもよくあ

るのです。その意味で先ずは①が優先

されます。

 

④家族も喜んでいる

 

言い方を補足すれば、その意義を家族

も喜んで共有しているという事です。

 

母親(又は祖母)の振袖を娘が着ると

いうことは、これは「継承」すること

に他なりません。

大げさに聞こえるかもしれませんが、

お嬢さんが、おばあちゃんやお母さん

の着物を着て成人を祝う時、本人も、

又家族も、その家族にしか分からない

共感や絆を感じるはずです。

 

なぜなら、娘が纏うその振袖には、同

じようにそれを着た、祖母や母の想い

も込められているからです。

 

新たに購入したり、レンタルで済ませ

た場合には、決して感じることのない

心情なのです。

 

そして、家族全員がこの感情を共有し

ていれば、お嬢様を祝う気持ちもポジ

ティブになり、より積極的に準備も進

めることが出来るはずです。

 

 

このように「ママ振り」に辿る道には

幾つもの障壁があります。

すべてをクリアするのは難しいのかも

しれませんが、少しでも可能性がある

のであれば、前向きに検討してみたら

いかがでしょうか。

 

「振袖」という着物が持つ本当の価値

に、改めて気付けるはずです。

 

 

 

 

 

 

 

質問/お宮参りの着物を七五三の祝い着に直すことはできますか?

秋口になると、毎年このような問い合

わせがよくあります。そりゃ使えるも

のなら使いたいですよね。

 

ネットで調べると、これがバラバラ。

できると載ってるサイトもあれば、

できないと書いてあるH・Pもある。

 

で、答えとしては、できるものもあれ

ば、できないものもある、です。

 

七五三とひと口に言っても三才、五才

七才とみんな大きさが違うのだから、

当たり前と言えば当たり前なんです。

 

が、実は寸法以前の問題としてほとん

どの方が勘違いしているのですが、

お宮参りの着物は「着るように」仕立

ててありません。

 

「?!」 ですよね。

 

別名「かけぎもの」と呼ばれるお宮参

りの着物は、赤ちゃんを抱っこしたお

母さんを包むような使い方をします。

つまり、初めから袖を通して着るよう

な仕立て方になってないのです。

 

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背中を見ると分かりますが、かけぎも

のには背縫いがありません。つまり、

一反の巾で身頃が出来ているのです。

 

通常、祝い着を含め着物は背縫いを介

して二反巾で仕立てます。二反分ある

ので、自由に身巾の調整が出来るので

すが、一反巾のかけぎものはそれ以上

身巾を広げることは出来ません。

つまり体格の大きなお子さんが着るの

は無理なのです。

 

そして、七五三に使えそうと誤解され

がちな理由が、その長く見える着丈。

 

しかしこれは赤ちゃんではなく、実は

赤ちゃんを抱いたお母さんの立ち姿を

考慮して長めに作られているのであり

赤ちゃんの身丈とは関係ないのです。

 

つまり、身巾そのままで無難に着ると

なると、せいぜい三才迄ということに

なります。

 

また、通常大きく腰揚げを取ると柄が

切れてしまうのですが、三才ならば上

に被布を着ることにより隠れてしまう

ので、これも好都合です。そしてこの

被布は単品で販売してますので、これ

だけ後から買い足せばよいのです。

 

但し、唯一お宮参りの着物が七五三で

も着られるケースがあります。

 

それは、初めから四つ身(七才)の要

尺で誂えてある場合です。

これなら寸法を直すこてにより、七才

まで着ることが出来ます。

 

しかしこのケースはまれで、一般的に

は仕立て上がりの既成品がほとんどで

はないかと思います。

もし、自分の持っているお宮参りの着

物がどちらか分からなければ、背中を

見てください。背縫いがあれば誂え品

なので、充分七五三にも使えます。

 

ということで(既製品であるならば)、

七才は使えません。

 

問題は五才です。

ネットでも見解が分かれていました。

 

五才の場合は、その子の体格によりま

す。当然三才より身体も大きくなりま

すが、小柄であれば着れないこともな

いかもしれません。が、

問題は寸法だけではないのです。

 

五才の祝い着姿は女の子と違い、着物

羽織・袴の3点です。着物はかけぎも

のを流用し、袴は袴セットとして商品

で買えますが、羽織は単品だけで版売

していません。そして五才の祝い着姿

は、この羽織がメインなのです。

 

もちろん、羽織を着ないという選択肢

もありますが(そうする人もいるのは

事実)、羽織姿でないと圧倒的に写真

映えが劣ります。

 

また、袴を合わせただけでは、袴ばか

りが目立ち、せっかくの着物の柄が死

んでしまいます。

 

それなら、いっそのことかけぎものを

羽織に直してしまえばどうかと、実は

以前に見積もったことがあるのですが

裄の長さを補う為、袖にハギを入れた

りと色々手を掛けると、これがそこそ

こ費用が掛かるのです。

さらに何とか形作ったとして、着物は

レンタルでと思っても、実はレンタル

はそのほとんどがフルセットの貸し出

しで、単品は不可。つまり手を掛けて

作り直す意味が全く無いのです。

 

結果五才の場合、着物として着るのな

らなんとか着られますが、祝い着本来

の使い方は出来ません。

 

で、以上のことをまとめると、

 

三才→〇

五才→X

七才→X

 

となります。

 

あ、な~んだ初めからコレだけで

よかったじゃん、短くて。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

丸染

久々の丸染です。

丸染加工はその名の通り、丸ごと染め

ます。解かずに染めるので、普通なら

必要になる仕立て代や裏地代といった

周辺費用が掛かりません。

 

加工代も3万円(税別)と、更生染め

としてはお手頃で、この金額で着物が

一枚増えるのならお得です。

 

お得なんですが、誰にでもお勧め出来

る染め方ではありません。

合う、合わないが、あるのです。

 

それをしっかり見極めないと、丸染ほ

ど野蛮で大胆で、リスキーな染め方も

ありません。

 

丸染は裏地が付いたまま加工します。

染料の中に漬け込んで染めるのです。

当然、裏も表も一遍に染まりますが

それが生地に不都合をもたらします。

 

生地が縮むのです。仕立てたままなの

で、表と裏の収縮率の違いからツレが

出て、全体に歪みが生じます。

 

元柄の染めによっては滲み、刺繡や箔

があれば、解れや剥離を起こすことも

考えられます。

 

生地の特性によっても異なり、ちりめ

ん系の撚糸を使ったものは特に縮み易

く、お召や紬等先染めのものはオレ・

スレが起きやすい傾向があります。

 

更に色自体も元色との混濁でくすみ、

染上がりは当初と微妙に変化する。

つまり染めてみないとどうなるか判ら

ない、言わば成り行き加工なのです。

 

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もちろん、これらのリスクは可能性の

問題であり、すべてがそうなるとは

限りません。

 

大切なのは、様々に異なる状態の着物

に合わせ、それらの故障が起きない様

または起きてもそれに対処可能かどう

かを「加工する前に」判断することな

のです。

 

いずれにしても、染めること(もちろ

んこれも当然熟練を要する)より、そ

れによって起こり得る様々な故障(そ

のままではとても着られない)に対処

し、特に必ず起こる「縮み」を修整す

ることが重要となり、この作業が全体

の6割を占めます。

 

実はこの生地の修整工程こそ、丸染の

最大の特徴であり、技術なのです。

この、縮んでツレて歪んだ生地の布目

を、熟練の職人の技はアイロンひとつ

で修整します。

 

そしてこのスキルがなければ、丸染と

いう染色法はありえません。

 

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丸染は、最近でこそその名を知られる

ようになりましたが、このような確固

たる修整技術がバックボーンにある事

は、あまり知られていません。

 

ただ、やはり100%元に戻すことは出

来ません。縮みは修整出来ますが、

どうしても袖口や八掛のフキの辺りに

ヨレが残ります。

 

なので完璧な仕上がりを求めるのであ

れば、この染めはお勧めできません。

 合わないのです。

 

丸染をお勧めできるのは、次の3つに

当てはまる人です。

 

①とにかく安いのがイチバン

②自分が着る

③細かいことは拘らない

 

染め上がりの出来栄えより、再び着る

ことができる着物に戻すことが重要な

ファクターである丸染は、染色方法と

しては異質かもしれません。

 

でも、少ない投資で大きな変化が得ら

れる丸染は、上手くいくと満足感も大

きい。その意味ではギャンブル的な要

素があるかもしれません。

 

更生染全般に言えることですが、

とにかくしっかりとした目的意識を持

つ、その染が合致するかを見極める。

その判断が大切です。

 

え、その指南ですか?

ハーイ、よろこんで!

もちろん、悪いようには

い・た・し・まっせ~ん。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

セミも団地住まい(のようにも見える)

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桜台団地にて。

ん~無理やり、かな。

 

染め帯の更生染

塩瀬の染名古屋帯。

最初、シミ抜きでお預かりしたのです

が、ご覧の通り、酸化した古いシミが

全体に広がっています。

 

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染帯は着物と同様に、シミ抜き加工は

可能なのですが、ここまで広範になる

と、費用の面で問題となります。

そこで、シミ抜きせず、染替えするこ

とにしました。

 

更生染にはいくつかの方法があります

が、その柄、汚れ具合、そして生かせ

るならどの様に使いたいか等、状況に

合わせて加工方法を考えます。

この帯は、染替が可能な染帯である、

全体に均等な濃さのシミがある、希望

としてはハデなので、もう少し地味な

感じになれば、ということでした。

そこで選んだのが、撒き糊の目引き染

です。

 

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撒き糊目引きとは、糊を全体にまぶし

その上から引き染で色を乗せます。

その後蝋を落とすと、全体が吹雪のよ

うに染まるのです。

 

この染方のメリットは、多少のシミ、

汚れは隠せる、色が乗ることでくすま

せることができる、です。

これで、当初の目的のシミを無くす、

出来れば地味にしたい、のどちらの

希望にも叶いました。

 

帯の染め替えは、帯皮のみの染め直し

となるので、仕立て直しが必要です。

また織りの帯は、ムラ・縮みを起こす

可能性があるので注意が必要です。